フローティングバナー

受託開発とは?働くメリットとデメリット、企業選びのポイントを徹底解説

この記事の監修者
5789
橋本 琢王
CIRANUI株式会社代表取締役 2015年にエンジニアとしてのキャリアをスタートし、制作会社のWEBディレクター、ヘルスケアスタートアップのWEBエンジニア、事業会社のプロジェクトマネージャー・プロダクトマネージャーなど様々なプロジェクトに参画。 プロジェクトマネージャー、WEBディレクター、WEBエンジニアとしてのキャリアを築く。 プロジェクトに参画しながら、2016年にフリーランスチーム「FIREWORKS」を立ち上げ、フリーランスで活躍するエンジニアやデザイナーと共に、WEBブランディング、WEB開発を行う。 2021年に個人事業主から法人化をしてCIRANUI株式会社代表取締役に就任。

受託開発とは、企業や組織が求めているシステム開発を外部に依頼し、それに沿ったシステムやソフトウェアを開発することです。

システム開発の市場や売上は増加しており、今後も一定の需要が見込まれています。

そんな受託開発企業へ転職を検討する際、働く環境や仕事の流れを抑えておくことで、転職活動をスムーズに進められるでしょう。

本記事では、受託開発企業で働くメリットやデメリットに加え、受託開発以外の企業や働き方も紹介します。

他企業の働き方や特徴を知ることで、失敗しない企業選びについても学ぶことができます。

ぜひ参考にしてください。

そもそも受託開発とは?

受託開発とは、その名の通りクライアントから発注を受け、それに沿ってシステム開発することです。

一般的にパッケージ化されたシステムだとコストは抑えられる一方、自社業務とマッチしない可能性があります。

そのため、自社業務に必要な機能をオーダーメイドで開発して欲しいというニーズがあった場合に発注がされます。

日本では主流となっているシステム開発の方法です。

受託開発業界の市場規模は約10兆円となっており、売上高は増加傾向にあります。

特にIoT、Fintech(フィンテック)など新しい技術も登場しており、IT投資はますます拡大が見込まれているのも特徴です。

エンジニアが所属する他の企業

エンジニアとして働く環境としては、受託開発以外にも、「SES」「自社開発」があります。

言葉だけは聞いたことがあっても、詳しく違いを知っている人は少ないのではないでしょうか。

契約形態、開発方法が受託開発とは異なるため、きちんと違いを抑えておくことが大切です。

ここでは、SES及び自社開発の特徴と、受託開発との違いについて解説します。

SES

SESとは「システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)」の略で、システム開発における委託契約の1種です。

通常システム開発の契約は、受託開発のように成果物を納品して対価を得る形式と技術者の労働に対して対価を得る形式に分かれています。

SESは後者の契約形態に分類され、成果物納品義務はありません。

簡単に言うと、クライアントから開発の依頼があった際、実際に自社内でシステムを開発して納品するのが「受託開発」、自社のスタッフ(労働力)を派遣して提供するのが「SES」となります。

自社開発

自社開発は自社サービスの開発、運営する形式です。

具体的にはWebサービス、アプリ、ECサイトから業務システムまで自社の提供するサービスに関するシステムを幅広く開発します。

クライアントから依頼を受けてシステム開発を行うのが「受託開発」、自社サービスの開発を進めるのが「自社開発」です。

自社開発は、受託開発企業やSES企業に開発を依頼するケースもあります。

開発の上流工程(企画・システム設計)に関われるのも、特徴の一つです。

受託開発の流れを理解しよう

受託開発の業務の流れは、依頼を受けて納品するまで大きく5つの工程に分かれます。

事前に仕事の流れを抑えることで、受託開発企業への就職後も、スムーズに業務に取り組むことができるでしょう。

また、納品までの構造を知ることで、就職する企業の選定ポイントも把握しやすくなります。

ここでは、受託開発の業務フローの5段階を詳しく解説していきます。

受託会社への仕事の依頼

まずは発注するクライアントから、開発の依頼が来るところからスタートします。

  • 「給与管理システムを作成して欲しい」
  • 「倉庫の商品・物流管理の仕組みを作りたい」
  • 「ECサイトを自社で1から作りたい」など

依頼内容は多岐に渡ります。

開発を依頼されるケースとしては、

  • 自社の営業が案件を獲得する
  • HPなどから問い合わせが来る
  • 既存クライアントからの紹介

などパターンは様々です。

また、依頼が来る場合はあらかじめ「RFP(Request for Proposal:提案依頼書)」が作成されていることが多いです。

RFPとは解決したい課題、システム開発に必要な要件をドキュメントにまとめたものになります。

このドキュメントを元に、開発に必要な打ち合わせを重ねていきます。

エンジニアとの打ち合わせ

次のステップでは、開発要件の詳細を確認していきます。

必要な機能や仕様、納期、スケジュールなどを決める「要件定義」という工程です。

多くの場合はクライアントのSE(システムエンジニア)やプログラマーと打ち合わせを行います。

自社とは勝手が違うため、クライアントの要望を細かく聞くことが大切です。

求められている要件に対して必要な機能や仕様は何かを詰めていきます。

また、この段階で自分たちができること、できないことをはっきりさせることも大切です。

ここで方向性を誤ると、作り直しになったり、納期がタイトになったり、社内への負担も大きくなります。

クライアントが求める成果物のイメージを揃える、その成果物を開発するためにはどの程度の期間、人員が必要かを整理して、次のステップに進みます。

見積もりと予算の決定

事前打ち合わせで必要な機能や仕様などを把握したら、開発に必要な工数や人数を見積もり、予算のすり合わせを行います。

見積もりはクライアントに提示する金額予算は実際に開発にかかるコスト=原価です。

見積書では、機能や基盤、検査方法、開発環境、動作環境、動作保証範囲、保証期間、開発スケジュールなど、細かい点まで記載されています。

開発着手前にクライアントと認識を揃え、求めるシステムの要件を細かく確認することで、トラブルを防げるためです。

また、システム開発の費用算出にはよく「人月単価」という単位を使用します。

これは人員1人が1ヶ月作業した場合の単価のことです。

担当する人の能力で単価は異なるので、社内の誰が担当することになるのかもこの時点で決定します。

開発開始

納品するシステムの詳細と、見積書で同意を得られたら、実際の開発がスタートします。

SEが機能を設計し、その設計を元に実際の開発はプログラマーが行うのが通常の流れです。

基本設計→詳細設計→プログラミングと開発を進める過程では、都度ドキュメントを残していきます。

万が一納品物に修正が求められた場合、どこに問題があったのかを指摘しやすくするためです。

もちろん、そうならないように開発中も定期的な打ち合わせを行っていきます。

開発の流れは細かく、長期に渡ることも多いです。

常にスケジュール通り進んでいるのかの確認や、開発中に何か問題が発生したときも素早く対処できるようにしていきます。

開発の途中も、依頼側に進捗を報告するのがいいでしょう。

コミュニケーションを多くとっておくことで微妙な成果物のずれや納品後の作り直しを防ぐことに繋がります。

実装とテスト

要件定義書に従い、基本設計→詳細設計が終わると、実装と呼ばれるプログラミング作業を行います。

実際のシステムを構築していくプロセスです。

システムを構築したら、システムテストを通じてシステムが稼働するかを確認します。

テストには主に4つの種類があります。

  • 単体テスト:機能・操作画面ごとの動作検証
  • 結合テスト:その他の機能・システムと連動させた動作検証
  • システムテスト:運用を想定した、システム全体での動作検証
  • 受け入れテスト:要件定義書や仕様書通りにできているかの最終確認

問題がないと判断されたら、成果物と共に運用マニュアルも合わせて納品します。

受託開発で働くメリット

受託開発企業で働くことで、業種、業界を超えた様々なクライアントとの人脈形成や、システム開発の経験も積むことができます。

受託開発企業で働くか悩んでいる人は、ここで紹介する「受託開発企業で働く5つのメリット」を参考にしてみてください。

メリットを知ることで、自分がやりたい仕事やキャリアを実現できるのか、の判断材料になるでしょう。

幅広い知識やスキル、経験が身につく

受託開発企業は、自社開発とは異なり多くの場合は複数の企業から開発を受注します。

案件の種類は多岐に渡り、開発言語や求められる技術も様々です。

また、複数クライアントと打ち合わせをすることで社内調整、交渉スキル=折衝能力も身につきます

最初は開発業務にしか興味がなかった人でも、他の業務を経験することで、自分でも思っていなかった適性が見つかるかもしれません。

また、開発以外の業務経験、スキルがあることで市場価値も高まりやすくなります。

その後の転職や、独立をしたい場合にもこれらの経験は活かされるでしょう。

自社開発に比べると入社しやすい

自社開発は、高い技術力を持った即戦力が求められやすい傾向にあります。

自社サービスの品質が悪くなってしまうと、会社の業績そのものへの影響が大きいためです。

そうなると、企業も採用に慎重になることに加え、自社開発は上流工程に携われることもあり必然的に人気も集まります。

一方受託開発は、複数の案件を常に抱えているため、社員のレベルに合わせた仕事が振りやすいです。

受託開発でも一定の開発レベルは必要ですが、自社開発よりは即戦力を求める意識は弱い傾向にあります。

教育制度が整っている

受託開発企業では、他社との差別化を図るため、新技術に対する投資を行ったり社員のスキルアップへの還元意欲も高いのが特徴です。

最新技術に関する知見やナレッジを共有したり、エンジニア同士で交流をする機会も設けられます。

その方が社員の開発力も上がり、結果的により多くの案件を受注することができるからです。

大手になるほどその傾向は強く、有料研修や書籍購入補助、資格手当など手厚いサポートがあります。

様々な企業や人物と人脈を作れる

受託開発では、幅広い業種や業界のシステム開発に携わることになります。

必然的に出会いは多く、他企業との人脈も形成されるのもメリットです。

仕事を通じてクライアントに評価されれば、そのまま引き抜かれるケースもあります。

フリーランスになった場合でも、仕事を発注してもらえる可能性もあるでしょう。

開発スキルを高める上でも、その後のキャリアに活かすにも、様々なクライアントと仕事を共にする経験は、大きなメリットになるはずです。

案件が多ければ安定して働けることが多い

国内企業の多くがシステム開発を外部に依頼しています。

その分案件数も比例して多く、安心して開発業務に集中して取り組めるでしょう。

一つの会社で腰を据えて働けることで、最初はプログラマーから、経験を積んでシステムエンジニアやプロジェクトリーダーなどの上流工程へステップアップすることも可能です。

受託開発企業の中には、IT業界で長い歴史を持っている企業も多く、50代、60代と長期的なキャリアパスを築いていくこともできるでしょう。

受託開発で働くデメリット

受託開発は様々なクライアントと関わるメリットがある一方、それに伴ってデメリットも生じてきます。

デメリットを事前に把握し、入社後のミスマッチをできるだけなくすことが大切です。

ここでは、受託開発における代表的なデメリットを4つ紹介します。

クライアントの要望に左右されがち

受託開発では、クライアントの依頼に沿った開発や運用を行います。

予算や機能など、プロジェクトの最終決定はクライアントにあり、場合によってはタイトなスケジュールで開発することもあります。

大口の取引先の要望を受けないことで、発注を切られたり、そのことによって会社の売上が厳しくなることもあるためです。

納期厳守、急な仕様変更の対応も受けざるを得ないケースもあり、残業が発生する可能性もあります。

加えて、自分のこだわりよりもクライアント要望が優先されるので物足りなさを感じることもあるかもしれません。

ユーザーの反応までは見れない

受託開発は、成果物を納品するまでが仕事になります。

基本的にはその後の保守や運用には関わりません。

そのため、実際にそのシステムがどう活用されているのか、役立っているのか、ユーザーの反応が見えないことがデメリットです。

自社で開発したサービスがヒットすれば、ボーナスなどで還元されることもありますが、受託開発はそうしたリターンが得られません。

もちろん、サービスがヒットしないことのリスクを負わないメリットにもなりますが、それをやりがいがない、と感じる人もいるようです。

ただ、受託開発企業によっては保守運用まで行っているケースもあります。

やりがい重視の場合は、そうした企業も選択肢に入れるといいでしょう。

客先常駐の可能性もある

一般的に客先常駐をして働くのはSES企業です。

ただ、受託開発企業であっても客先常駐の可能性は0ではありません。

開発において、クライアントのセキュリティが厳しいこともあるためです。

社外での開発が許容されない場合、クライアント先に常駐して仕事をすることもあります。

慣れない環境で働くことや場合によっては転勤になる可能性もあることは人によってはデメリットです。

事情によって転勤が難しい場合は、事前に確認しておくといいでしょう。

下請けだと給与が低い可能性がある

受託開発における下請けとは、クライアントから直接開発を依頼された企業が、その業務の一部を別の開発会社に発注することです。

元々直接依頼された開発会社が間に入ることによりマージンが発生します。

その分、報酬が下がり結果的に従業員の給与も低くなります。

受託開発はこうした多重請負構造であることがほとんどです。

二次請け、三次請けになってしまうとますます利益が少なくなり、給与も下がります。

給与面が気になる人は、下請け企業になっていないかを必ず確認するようにしましょう。

受託開発の企業を選ぶポイント

受託開発と言っても、扱う分野、得意な業界、業務範囲は様々です。

入社してから「自分が思っていた仕事ではなかった」となれば、長く働くことが難しく結果的にスキルも身につきません。

そうならないためにも、企業選びのポイントを抑えておくことが重要です。

これまでのメリット、デメリットを踏まえ、受託開発企業を選ぶ際、チェックしたいポイントを3つ紹介します。

一貫したシステム開発を行っているか

まずは設計から開発、運用まで一貫してシステム開発に携わっているかどうかです。

一貫してシステム開発を行っている企業であれば、開発業務の一部を請け負う下請け企業の可能性が低くなります。

下請け企業に就職してしまうと、開発の一部しか携わることができず、他工程の知識やノウハウも蓄積しづらいのが難点です。

給与も低い傾向にあるため長く働くモチベーションにもなりづらいでしょう。

システム開発を一貫して行う企業であれば、上流工程から携わることもでき、開発のノウハウも蓄積されているため、将来性が高い企業といえます。

幅広い業界で開発を受けているか

特定の業界やクライアントに依存していないかも大切なポイントです。

依存していると、そのクライアントや業界の業績が悪化したり契約がなくなってしまうことによるインパクトが大きく、安定して働くのが難しくなります。

また、複数の業界、クライアントを抱えている方が、案件の種類も多く業務経験も広がりやすいです。

幅広い業界で受託開発している、取引先が複数ある、といった点も確認するようにしておきましょう。

クライアントから直接受託しているか

ここも下請け企業を選ばない為に見ておきたいポイントの一つです。

直接クライアントから業務を委託していれば、自社でそのまま開発をするか、一部の業務を発注する側になります。

クライアントや元請けから委託しているのかどうかも、合わせて確認しておくようにしましょう。

受託開発企業でたくさんの実績をつけよう

受託開発企業は企業によって違いはあれど、サービスの設計から開発、保守運用まで一貫して携わることができる可能性もあります。

様々な業界の多種多様なシステム開発を経験できます。

IT業界未経験からでもチャレンジしやすい環境ですので、キャリアのスタートとしては非常に良い選択肢と言えるでしょう。

ぜひ、受託開発企業でエンジニアとしてのキャリアを築いていきましょう。

よくある質問

ここまで受託開発の仕事の特徴、働く上でのメリットやデメリットをお伝えしてきました。

ここではさらに、受託開発の仕事や企業に興味はあるけど中々聞きづらい、けど本音では聞いておきたいという代表的な質問に回答をしていきます。

受託開発とSESだとどちらがおすすめですか?

SESの場合は受託開発と異なり、労働力を提供します。

客先常駐がベースになるため、転勤や出張も多いが成果物の納期が決まっている受託開発と比べ、残業時間が短くなる一方、給与が低くなりがちです。

給与面、案件を通して開発スキルを高めたいのであれば、受託開発をおすすめします。

受託開発はやめとけと言われますが、なぜですか?

一つは、受託開発の市場が縮小する可能性もあると言われているためです。

受託開発、IT投資の市場は増加が見込まれていますが、一方で近年、システム開発を外部に発注するよりも、クラウドサービスなどを活用し内製化を進める企業も増えています。

そのため、懸念は受託開発の需要縮小の可能性もあることです。

加えて、受託開発のデメリットでもお伝えした、納期の関係で残業が発生、一部の会社で長時間労働になっているのも理由の一つでしょう。

とはいえ、デメリットや不安要素が何もない業種や会社は存在しません。

中には将来性のある受託開発企業も多くあります。

改めて、開発だけでなく保守や運用まで携わっているか、特定の取引祭に依存していないかなど確認し、キャリアアップにつながる企業をぜひ選んでいってください。

最新情報をチェックしよう!