サイバー攻撃からネットワークやシステムを守るセキュリティエンジニア。
デジタル化が進む現代において欠かせない存在です。
近年では情報セキュリティへの注目も高まっていることから、セキュリティエンジニアに関心を持っている人も多いのではないでしょうか。
とはいえ、具体的な仕事内容やセキュリティエンジニアになるために何が必要なのかはイメージしにくいですよね。
そこで今回は、セキュリティエンジニアの仕事内容や年収、必要なスキルを徹底的に解説します。
合わせて、セキュリティエンジニアの将来性やおすすめの資格についても見ていきましょう。
セキュリティエンジニアに興味を持っている人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
セキュリティエンジニアとは
セキュリティエンジニアとは、サイバー攻撃からシステムやネットワークを守ることに特化したエンジニアのことです。
近年ではあらゆるモノがインターネットでつながるようになり、生活が便利になった一方でセキュリティ上のリスクが高まっています。
例えば、不正アクセスにより企業の機密情報を盗まれた場合、大きな損害が出るだけではなく、信頼を失うことにもなりかねません。
そのようなリスクから大切な情報を守るのがセキュリティエンジニアです。
情報を守ることを「情報セキュリティ」と呼び、以下の3つの要素を確保することが重視されます。
- 機密性:情報が漏れないこと
- 完全性:改ざんされていない正しい情報であること
- 可用性:いつでも情報を利用できること
セキュリティエンジニアは、情報の機密性・完全性・可用性を考慮したシステムの構築や運用・管理を担当します。
セキュリティエンジニアの仕事内容
この章では、セキュリティエンジニアの仕事内容を見ていきましょう。
先ほどお伝えしたとおり、セキュリティエンジニアの仕事は情報を守ることです。
具体的には、情報セキュリティに強いシステムやネットワークの導入、サイバー攻撃を受けた際の対応などが挙げられます。
セキュリティエンジニアにはさまざまな業務がありますが、以下の4つの工程に分けられます。
- 要件定義
- 設計
- 実装・テスト
- 運用・保守
企業によっては一部の工程だけを担当する場合や、すべての工程を一貫しておこなう場合もあります。
全体像を把握しておくことで、実際に現場へ入ったときのイメージがしやすくなるでしょう。
要件定義
まずおこなうのは、どのようなセキュリティ対策が必要かを分析する要件定義です。
システムのセキュリティ診断を実施し、サイバー攻撃に対する脆弱性や将来的なリスクを洗い出します。
これらの情報をもとに要件定義書を作成し、実施すべき対応をクライアントに提案するのです。
要件定義書に記載する内容は以下の項目が挙げられます。
- OS
- ファイアウォールの設定
- アクセス権限の範囲
- 認証の方法
- 運用・管理体制
また、ISMSやプライバシーマークの取得を目指す企業へのサポートもおこないます。
これらは情報を適切に管理している証であり、近年では取得を目指す企業が増えてきているため、重要な業務の1つです。
セキュリティエンジニアは、企業の組織体制や業務フローなどを情報セキュリティの観点から見直して、改善を提案します。
設計
要件定義書を作成したら、それをもとに設計をおこないます。
単に要件を満たせばよいわけではなく、セキュリティに配慮した設計をしなければなりません。
情報セキュリティに強い人材が実際の運用環境にいるとは限らないため、どのような環境でシステムを運用・管理するのかを考慮する必要があります。
また、ネットワーク機器などのハードウェアやアプリケーションについても把握し、セキュリティに強いものを選定することも大切です。
さらに、近年ではクラウドを活用するケースが増えているため、クラウドの知識を持った人材のニーズが高まっています。
このように、セキュリティエンジニアはセキュリティに関することだけではなく、幅広い知識が求められるのです。
実装・テスト
設計を終えたら、セキュリティに配慮した実装をおこないます。
具体的には、ネットワークの構築や外部機器の接続、アクセス権・認証の設定などです。
実装では、セキュアプログラミングやセキュリティアーキテクチャの知識が求められます。
セキュアプログラミングとは、脆弱性を取り除くプログラミング方法のことです。
セキュリティアーキテクチャは、セキュリティに強いシステムをつくるための枠組みを指します。
実装が完了したら、次におこなうのはテストです。
テストでは、ペネトレーションテスト(侵入テスト)という方法が使われます。
これは実際のサイバー攻撃で使われる手口をシステムに実行し、問題が起こらないかを確認するものです。
システムに異常が発生した場合は原因を突き止め、脆弱性を取り除きます。
運用・保守
セキュリティエンジニアの仕事は、システムが完成したら終わりではありません。
ユーザーがシステムを安全に使用できるように、運用・保守をおこないます。
具体的には、通信データの監視やOSのアップデート作業、バックアップデータの取得などです。
また、サイバー攻撃の手口は次々と進化しているので、常に情報を収集しておかなければなりません。
新たな手口にも対応できることや、システムのセキュリティを継続的に確認することが必要です。
さらに、システムに障害が発生した場合はその対応をおこないます。
情報の流出や改ざんは企業にとって大きなダメージになるので、対応の正確さだけではなくスピードも大切です。
セキュリティエンジニアはやめとけと言われる理由
重要な役割を持つセキュリティエンジニアですが、インターネット上ではよく「やめとけ」と言われています。
そのような投稿を見て、不安に思っている人も多いのではないでしょうか。
セキュリティエンジニアはやめとけと言われる理由として、主に以下の3つが挙げられます。
- 肉体的・精神的に負担が大きい
- 幅広い知識が必要
- 仕事に感謝されない
まず、セキュリティ上の問題は企業にとって損失が大きいため、異常が発生した際は迅速な対応が求められます。
そのため、深夜や休日でも対応しなければならないこともあるのです。
重要な情報を守る仕事は責任が大きく、プレッシャーを感じるでしょう。
また、セキュリティの知識に加えてハードウェアやソフトウェアなど、幅広い知識を求められます。
新しいサイバー攻撃の手口が次々と誕生するので、常に学習を続けることも必要です。
さらに、セキュリティエンジニアは人目につかない裏方の仕事なので、誰かに感謝されることはあまりありません。
こうした理由から、セキュリティエンジニアはやめとけと言われるのです。
セキュリティエンジニアの年収をご紹介
セキュリティエンジニアを目指すなら、どのくらい年収をもらえるのか気になりますよね。
この章では、セキュリティエンジニアの年収を紹介します。
求人ボックスのデータによると、セキュリティエンジニアの平均年収は589万円でした。
ちなみに、国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、全業種での平均年収は443万円です。
このことから、セキュリティエンジニアの平均年収は高いといえます。
年代別の平均年収を見てみると、20代は339〜445万円、30代は533〜573万円です。
40代以降は600万円を超えています。
dodaでセキュリティエンジニアの求人を検索したところ、年収1,000万円を超える企業もたくさんありました。
もちろんスキルや入社する企業にもよりますが、セキュリティエンジニアは高い年収を目指せる職種です。
セキュリティエンジニアにおすすめの資格
資格がなければセキュリティエンジニアになれないわけではありません。
しかし、資格取得のために勉強することで必要なスキルが身につき、仕事でも役立ちます。
面接でアピールにも使えるので、資格を取得しておいて損はないでしょう。
セキュリティエンジニアにおすすめの資格は以下の3つです。
- 基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
- CCNA (シスコ技術者認定)
- 情報セキュリティマネジメント試験
気になる資格があれば、ぜひ取得を目指してみてください。
基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は、経済産業省が認定する国家試験です。
IT業界で働く上で必要な知識・技能が問われます。
いずれも以下の3つの分野に分けて出題され、出題範囲が非常に広いのが特徴です。
- テクノロジ系:ハードウェア・ソフトウェア全般
- マネジメント系:プロジェクト管理・システム監査
- ストラテジ系:経営戦略・法務
基本情報技術者試験の合格率は例年20%台後半でしたが、2023年4月から新たな試験制度が導入されてからは50%台と高い水準になっています。
一方、応用情報技術者試験は試験制度に変更がなく、合格率は20%台前半と難易度が高いです。
これらの資格を取得することで、ITに関する幅広いスキルを持っている証明になるため、転職でのアピール材料になるでしょう。
また、企業によっては資格手当をもらえることもあります。
CCNA (シスコ技術者認定)
CCNA (シスコ技術者認定)は、ネットワーク機器メーカー・シスコ社が認定する資格です。
シスコ社が認定する資格は5種類のグレード(難易度)に分かれており、CCNAは下から2番目のグレードにあたります。
CCNAではネットワークに関する知識が問われ、出題範囲は以下のとおりです。
- ネットワークの基礎知識:TCP/IP・仮想化
- ネットワークアクセス:スイッチ・LANの設定
- IP接続:ネットワーク機器の設定
- IPサービス:NAP・DNS・TFTP/FTP
- セキュリティの基礎知識:認証・アクセス制限
- ネットワーク管理の自動化:自動化の手法・影響
合格率は公表されていませんが、20〜30%ほどだといわれています。
資格の有効期限は3年間であり、更新するには再度試験に合格するか、上位の資格を取得しなければなりません。
セキュリティエンジニアにとってネットワークの知識は欠かせないものです。
かなりハードルの高い資格ですが、取得すれば転職の際に強い武器となるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティマネジメント試験は、情報セキュリティを確保するために必要な基本的スキルを認定する試験です。
経済産業省が認定する国家試験であり、出題範囲は基本情報技術者試験と重複している部分があります。
- 情報セキュリティの基礎知識
- 情報管理・リスク管理
- 具体的な対策
- 情報セキュリティ関連の法律
- ハードウェア・ソフトウェア全般
- プロジェクト管理・システム監査
- 経営戦略・法務
実際の現場の動向をとらえた問題が多く出題されるため、実践的なスキルを身につけられるのがメリットです。
合格率は50〜70%台と、比較的取得しやすい資格だといえます。
そのため、単体では転職でのアピール材料にするのは難しいかもしれません。
ほかの資格も合わせて取得し、プラスαとして情報セキュリティに関するスキルも持っていることをアピールするのがよいでしょう。
セキュリティエンジニアに必要なスキルと知識
セキュリティエンジニアにはさまざまなスキルや知識が求められると先にもお伝えしました。
ここからは、セキュリティエンジニアに必要なスキルと知識を見ていきましょう。
具体的には、以下の3つが挙げられます。
- プログラミング
- ネットワーク関連の知識
- セキュリティ関連の知識
スキルが何もない状態でセキュリティエンジニアを目指すのは、はっきり言って難しいです。
必要なスキルと知識を身につけた上で、転職に向けて準備しましょう。
プログラミング
セキュリティエンジニアは、システムやアプリケーションをサイバー攻撃から守ることも仕事なので、プログラミングのスキルが必要です。
特に、プログラムの脆弱性を取り除くセキュアプログラミングのスキルが求められます。
脆弱性を放置しておくことは大きなリスクにつながるので、被害を最小限に抑えるためのスキルが必要なのです。
使用するプログラミング言語は、プロジェクトによって異なります。
よく使われるのは以下の5つです。
- PHP
- JavaScript
- Python
- C
- C++
さまざまなシステムやアプリケーションがありますが、なかでも外部からアクセスされるWebアプリケーションは、セキュリティの重要度が高いです。
そのため、セキュリティエンジニアが使用するプログラミング言語は、Webアプリケーション開発で使われるものが多くなっています。
ネットワーク関連の知識
セキュリティに強いネットワーク環境を構築するために、ネットワーク関連の知識も必要です。
ネットワークがサイバー攻撃を受けることも多いので、十分に知識を身につけておかなければなりません。
求められるネットワーク関連の知識として、具体的には以下のとおりです。
- OSI参照モデル
- TCP/IP
- LAN
- VPN
- 機器の設定方法
OSI参照モデルとTCP/IPは、データ通信の構造を定義したものを指します。
これらはネットワークを介してデータをやりとりするために欠かせない知識なので、まず身につけておきましょう。
また、ルータやスイッチなど、ネットワーク機器の設定や接続方法を理解することも大切です。
さらに構築・運用方法だけではなく、どのような脆弱性があり、どのように対処すべきなのか、セキュリティ面も把握しておく必要があります。
セキュリティ関連の知識
セキュリティエンジニアには、セキュリティ関連の知識も欠かせません。
サイバー攻撃にはさまざまな種類があり、その手口は日に日に進化しています。
例えば、プログラムの脆弱性が対処される前に攻撃する「ゼロデイ攻撃」や、キーボードで入力した文字を盗み見る「キーロガー」などです。
これらの対処法として、以下が挙げられます。
- ファイアウォールの設置
- 認証
- アクセス制限
- ウイルス対策ソフトの導入
- OS・アプリケーションのアップデート
- 電子署名・証明書
サイバー攻撃の脅威から守るために、これらの設定や運用方法をしっかりと理解しておかなければなりません。
また先ほどお伝えしたとおり、サイバー攻撃は次々と新しい手口が生まれています。
一度対処しても、新たな手口によってセキュリティを突破されてしまう可能性もあるのです。
そのため、常に最新のセキュリティについて学習する必要があります。
セキュリティエンジニアの将来性
セキュリティエンジニアは将来性の高い仕事です。
その理由として、以下の3つが挙げられます。
- セキュリティの重要性が高まっている
- 人材が不足している
- 幅広い業界で活躍できる
デジタル化の加速により、生産性や利便性が向上する一方で、情報が外部へ流出するリスクを抱えています。
そのため、情報セキュリティへの注目が高まってきました。
しかし、セキュリティエンジニアは人材が不足している状況です。
セキュリティ会社・NRIセキュアテクノロジーズの調査によると、89.8%の企業が「セキュリティ人材が不足している」と回答しました。
需要が高まっているものの人手が不足しているため、多くの企業から求められる人材を目指せるのです。
また、セキュリティエンジニアが求められるのは、IT業界だけではありません。
近年ではあらゆる業界でデジタル化が進んでいるため、幅広い業界で活躍できます。
未経験からでもセキュリティエンジニアになれるのか?
セキュリティエンジニアに興味を持った人のなかには、「未経験からでも目指せるの?」と不安に思っている人もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、未経験からでもセキュリティエンジニアになれます。
ただし、セキュリティエンジニアは幅広いスキルや知識が求められる仕事です。
あらかじめスキルを磨いておかなければ、転職するのは難しいでしょう。
先ほどお伝えしたプログラミング・ネットワーク・セキュリティのスキルや知識を身につけておくことが大切です。
これらを身につけるためには、プログラミングスクールに通う、学習サイトや書籍を活用するなどの方法があります。
自分に合った学習方法を選んでください。
また、この記事のなかで紹介した資格を取得するのも有効です。
学習を通じて必要な知識を身につけられるほか、面接でのアピールにも使えます。
セキュリティエンジニアは需要のある仕事
今回は、セキュリティエンジニアの仕事内容や年収、必要なスキルなどを解説しました。
セキュリティエンジニアは、大切な情報をサイバー攻撃から守る重要な仕事です。
デジタル化の加速によって需要が高まっており、IT業界以外にもさまざまな業界で活躍できます。
また、平均年収は589万円であり、ほかの職種と比較して高いのが魅力の1つです。
セキュリティエンジニアは未経験からでもなれるので、興味を持った人はぜひチャレンジしてみてください。
ただし、プログラミング・ネットワーク・セキュリティの幅広いスキルや知識が求められます。
まずは必要なスキルや知識を身につけて、セキュリティエンジニアへの転職を目指しましょう。