近年、Pythonという用語をインターネットや書店で見掛けることが多くなってきました。
パソコンに関係するプログラミング言語という想像はつくものの、Pythonが一体どんなもので、どんなことができるのか、イマイチ掴めないという人も多いでしょう。
そこで、今回はPythonがどんなもので、どんなことができるのかを徹底的に解説していきます。
実際に、どんなサービスにPythonが使用されているのかを具体例を交えて見ていきます。
Pythonとは
Pythonは1991年にオランダ人のGuido van Rossum(グイド・ヴァンロッサム)氏によって開発されたプログラミング言語で、いくつかのバージョンアップを経て今も幅広い用途で利用されています。
構文もシンプルで読みやすいことから、Webサイト・数値計算・機械学習・AI(人工知能)などの開発にも貢献しています。
Google・Instagram・Dropboxなどの名だたる会社がPythonを利用しているのもうなずけますね。
Pythonの特徴
次にPythonの特徴について見ていきましょう。
Pythonには以下の3つの特徴があります。
- コードがシンプル
- ライブラリが豊富
- フレームワークも充実
Pythonはコードがシンプルで多くの処理が可能なため、プログラミングを学び始めた初心者にもうってつけです。
さらにライブラリやフレームワークも充実しており、後述するDjangoやFlask、TensorFlowなどを利用することが可能です。
数多くある言語の中でも、Pythonは比較的学習しやすい言語と言えるでしょう。
Pythonを使うメリット
Pythonを使うメリットについては、大きく分けて以下の2点があります。
- 開発工数を抑えられる
- 無料で利用できる
この2つのメリットがあるがゆえに多くの人に受け入れられ、ここまで人気のあるプログラミング言語となりました。
開発工数が抑えられる
さきほども少し触れましたが、Pythonはコードがシンプルで分かりやすいため、他のプログラミング言語に比べてソースコードが少なめです。
そのため、自分以外の別の誰かが書いたコードの修正も比較的容易におこなえます。
さらにPythonには実用的なライブラリが豊富に揃っており、目的に合わせて最適なコードを選択することが可能です。
このように自分で一から開発する手間を省くことが可能なため、開発工数が抑えられるのです。
無料で利用できる
Pythonの2つ目の特徴として、無料で利用できるという点が挙げられます。
Pythonはオープンソースであるため、基本的にはパソコンとインターネット環境が整っていれば誰でも利用可能です。
開発や研究活動には、利用時のコストや導入時のハードルなどが懸念されることも多いですが、Pythonならそのような心配は無用でしょう。
誰でも簡単に自分と同じ環境を相手に用意してもらうことができるため、企業や個人にも広く普及してます。
初心者におすすめのWebサイト開発フレームワーク
ここからは、Pythonで利用できる初心者におすすめのフレームワークを3つご紹介します。
- Django(ジャンゴ)
- Flask(フラスク)
- TensorFlow(テンソルフロー)
いずれもPythonとの相性は抜群です。
Django(ジャンゴ)
DjangoはWebフレームワークに求められる機能の大部分を網羅しており、とても人気のある多機能フレームワークです。
多くのユーザーがいるため、書籍やネット上でも解説が豊富で初心者にもおすすめです。
Djangoを使うメリットとしては、高速な動作・安全なセキュリティ設計・メンテナンスの容易さ・学習コストの低さなどが挙げられます。
Djangoを使いこなせるようになれば、コンテンツ管理システム、SNS、ニュースサイト、高品質なアプリケーションなどを少ないコードで作成することが可能となるでしょう。
Flask(フラスク)
Flaskは、最小限の機能で軽量なフレームワークであるため、初心者にも扱いやすいフレームワークです。
ただし、機能が限定的であるため、他のライブラリと上手く組み合わせて使っていく必要があります。
また、手軽にWebサイトやWebアプリケーションの開発ができるため、スピードが求められる単発での開発にFlaskは向いています。
機能の追加も容易におこなえるため、手軽に自分好みにカスタマイズできるのもFlaskのメリットです。
ですが、拡張機能を追加しすぎると動作が重くなってしまうので、その点には注意しておきましょう。
TensorFlow(テンソルフロー)
TensorFlowは機械学習やディープラーニングの分野では欠かせないオープンソースのフレームワークです。
ディープラーニングのフレームワークではその都度、GPUの処理が必要となるものも多いですが、TensorFlowでは元々GPUを使用する設定になっているため、効率的な開発が可能となります。
TensorFlowはGoogleによって開発され、多くの機械学習プロジェクトで使用されています。
小規模なプロジェクトから大規模なプロジェクトまで対応可能で、世界中の多くの開発者によって利用されていることもあり、情報も豊富です。
Pythonでできること
ここからはPythonでできることをもう少し深掘りしていきましょう。
代表的なものとして、以下の4つが挙げられます。
- AI開発・機械学習
- データ分析・解析
- ブロックチェーン開発
- Webアプリケーション開発
それでは、順番に見ていきましょう。
AI開発・機械学習
Pythonでできることの中で、いま最も注目されているのがAI開発・機械学習の分野です。
Pythonの特徴として、機械学習のためのフレームワークが充実しており、回帰や分類といった手法を効率よく実装していけるという特徴があります。
一般的な機械学習だけでなく、ディープラーニング(深層学習)まわりの実装もできるため、「画像処理」「音声認識」「自然言語処理」といった領域もカバーすることが可能です。
現在では、来客予想やテキスト解析にも利用されており、研究開発だけでなく、企業活動においてもPythonは欠かせない存在となっています。
データ分析・解析
Pythonが得意とする分野にはデータ分析・解析といった領域もあります。
Pythonではデータ分析・解析のためのライブラリが充実しており、大量のデータを高速かつ正確に計算・分析することが可能です。
具体的には、膨大なデータのなかから必要なデータだけを取り出しコピーしたり、データを内部計算して読みやすいように行列表にまとめたりすることもできます。
こうした特徴を活かし、ビッグデータを用いた物流戦略、ポータルサイトのデータ解析にも活用されています。
他にも、定期的な情報収集やブラウザ操作が可能なため、株価の最新情報を自動で収集するといったことも可能です。
ブロックチェーン開発
Pythonはビットコインをはじめとする、仮想通貨に利用されているブロックチェーンの技術を実装することが可能です。
ブロックチェーン開発にPythonが利用されている理由の一つとして、必要なハッシュ関数などのライブラリが多数用意されていることが挙げられます。
ちなみに、ハッシュ関数とは入力したデータを変換してくれる関数のことです。
もし、Pythonを利用してブロックチェーン技術を実装することができれば、新しい仮想通貨を発行することも可能となります。
現在では、フィンテックと呼ばれる金融とITを組み合わせた分野での需要が高くなっています。
Webアプリケーション開発
Pythonはライブラリが豊富なだけでなく、アプリケーション開発には欠かせないフレームワークが多数存在しています。
この豊富なライブラリやフレームワーク、シンプルなコードやその特性を活かして、迅速かつ高品質な開発が可能です。
さらに、ChromeやSafariなどWebブラウザ上で操作するWebアプリケーションの開発だけでなく、YouTube、Instagramといった有名なプラットフォームの開発にも利用されています。
その理由として、「エラーを引き起こしにくい」「コンパイルが不要」「OSの種類を問わない」「AIとの連動が可能」などが挙げられます。
Pythonの苦手な開発
ここまでPythonのメリットやできることなどを見てきましたが、Pythonにも苦手な開発があります。
Pythonの苦手とする開発は以下の3つです。
- ゲーム開発
- スマホアプリの開発
- デスクトップアプリの開発
上記開発については、Pythonよりも他のプログラミング言語の方に軍配が上がります。
それでは、Pythonの苦手な開発について具体的に見ていきましょう。
ゲーム開発
PythonはCPUの処理速度が比較的遅く、メモリ使用量も大きいため、3Dグラフィックスゲームなど複雑で高速な処理が求められる用途には不向きです。
例えば、C++やC#にはゲーム開発に特化したライブラリやフレームワークが豊富にありますが、Pythonの方はそれほど多くありません。
ゲーム開発にはC言語やJava、C++、C#といった言語のほうが向いているため、環境に適した言語を利用するようにしましょう。
スマホアプリの開発
Pythonはスマホアプリの開発にも適していません。
というのも、Android/iOSともに、スマホアプリを開発するためのライブラリがそれほど多くないからです。
ゲーム開発と同様、Unity、Java、Kotlin、Swiftなど、Pythonよりもメジャーなプログラミング言語が多数存在します。
そのため、Pythonでの開発はおこなわず、スマホアプリの開発に適した言語を用いる方が作業もスムーズとなるでしょう。
デスクトップアプリの開発
デスクトップアプリの開発についてもPythonは向いていません。
というのも、Windows系ならC#、MacOS系ならSwiftなど、デスクトップアプリの開発を得意としているプログラミング言語は多数存在するからです。
特に、C#はマイクロソフトが開発した言語であり、もともとWindows向けアプリとの相性も抜群です。
そのため、開発現場ではよほどの事情が無い限り、わざわざPythonを使用してデスクトップアプリの開発をおこなうことは稀と言えるでしょう。
Pythonで開発されたWebサイトやサービス
ここからは、実際にPythonで開発されたWebサイトやサービスを5つ見ていきます。
- Dropbox
- YouTube
- Amazon
- Spotify
いずれも、普段見聞きしたことのあるWebサイトやサービスばかりですね。
改めて1つずつ見ていきましょう。
Dropbox
Dropboxはあらゆる環境からアクセスできるオンラインストレージサービスとして有名ですが、実はすべてPythonによって開発されています。
その開発にはPythonの開発者であるGuido van Rossumも携わっていました。
Dropboxはシンプルで拡張性も高く、エラーの発生率が低いといった特徴を持っています。
WindowsやMac、LinuxなどOSを問わずに利用できることもあって今現在でも多くの人が利用しています。
YouTube
世界的な動画投稿サービスであるYouTubeにもPythonの技術が使われています。
YouTubeが大量のデータを処理し、大勢のユーザーに対応できているのはまさにPythonの処理能力に依る所が大きいでしょう。
たとえば「Open Search」というライブラリを使用して検索機能の開発がおこなわれていたり、フレームワークでは先ほど触れた「Django」が使用されていたりします。
こうしたサーバーサイドの処理をおこなうことで、YouTubeは今現在も多くの人が快適に利用できるプラットフォームとなっています。
Amazon
Amazonのサービスにも、顧客のニーズを分析し提案する機能にPythonが利用されています。
サービスを利用したことがある人なら馴染みがあるかと思いますが、検索履歴や購入情報からおすすめが表示される仕組みが特徴となっています。
Amazonでは膨大な商品データを管理しつつ、時代の流れに適応していくために多くの言語が使われています。
ですが、Pythonは他プログラミング言語とも相性が良いため、それら複数の言語と併用しての開発が可能となります。
世界的な写真共有サービスであるInstagramにもPythonが活用されており、フレームワークのDjangoが利用されています。
Instagramは当初、2人の社員で設立された会社でしたが今では社員も増え、全世界に約10億人ものユーザーがいる大人気のサービスになりました。
画像や動画の分類・認識においてはPythonのディープラーニング技術との相性も抜群で、大きな負荷にも耐えられます。
そして、シンプルかつスムーズに処理をおこなえるのがPythonの特徴でもあります。
まさに、コードが少ないからこそInstagramの仕様に柔軟に対応できたと言っても過言ではないでしょう。
Spotify
Spotifyは大手音楽配信サービスで、データ解析や機械学習にPythonが活用されています。
特に、ユーザーにパーソナライズされた音楽体験を提供することなどに役立てられており、データ分析機能などを利用して楽曲のデータの解析が可能です。
バックエンドサービスやAPIの開発にもPythonが使用されています。
Pythonには数値計算を扱うライブラリが多く取り揃えられているため、まさにデータ分析を必要とするSpotifyのようなサービスに向いていると言えるでしょう。
開発目的に合ったPythonフレームワークを選ぼう
ここまで見てきたように、開発工数を抑えられ、無料で利用できるPythonは初心者におすすめのプログラミング言語と言えるでしょう。
ですが、Pythonはゲーム開発やスマホアプリの開発といった分野は苦手ということもあり、目的にあったPythonのフレームワークを選択することが重要です。
一方で、世界中に利用者がいるというメリットを受けつつ、悩みや疑問がある場合はネットや書籍の豊富な情報も活かしながらスキルアップを目指していきましょう。