PHPはWeb開発でよく使われるプログラミング言語ですが、効率的にPHPを活用するにはフレームワークが必須です。
しかし、これからPHPフレームワークを学ぼうとしている人の中には「フレームワークってどんなもの?」や「どのフレームワークを選べばいいのか分からない」と疑問を感じている方もいることでしょう。
本記事では、そのような方々に向けて“仕事で役立つ”PHPフレームワーク10選をご紹介します。
トレンドや将来性、学習の難易度についても解説しますので、フレームワークを選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。
PHPフレームワークを理解しよう
まずは、PHPフレームワークの基礎について正しく理解しましょう!
ここでは、PHPフレームワークの概要と、フレームワークとしばしば混同される「ライブラリ」について、それぞれの特徴とその違いを説明します。
PHPフレームワークとは?
PHPフレームワークは、PHPを利用したWebサイトやアプリケーションの開発で使われる枠組みのことです。
これを使うことで、ゼロからコードを書かずに効率的に開発を行うことができます。
また、PHPフレームワークはソースコードを無償で一般公開する「オープンソース」であり、ほとんどの場合、無料で利用できます。
これなら、自分が求めるものと合わなかったら他のものを選ぶことも簡単です。
PHPフレームワークには、一般的なアプリケーションの開発に使うものや、Webシステムの開発に特化したものなど様々な種類があるので、プロジェクトの要件や目的と照らし合わせて選ぶようにしましょう。
この記事の後半では、おすすめのPHPフレームワーク10選をご紹介するのでぜひ参考にしてください。
フレームワークとライブラリの違いとは?
フレームワークと似た言葉に「ライブラリ」があります。
どちらもプログラミングを行う上で非常に役に立つソフトウェアですが、それぞれ特徴が異なります。
違いをしっかり確認しておきましょう。
- フレームワーク:開発全体の枠組み・雛形を提供する機能
- ライブラリ:よく使われる汎用性の高いプログラム(部品)をまとめたもの
これらを家の建設に例えるなら、フレームワークは家の足場や基礎となる骨格であり、ライブラリは家を組み立てるのに必要な建材や道具が詰まった倉庫のようなものです。
倉庫の建材や道具を使用して家を組み立て、さらに自由にカスタマイズしていくことでオリジナルの家(Webサイトやアプリケーション)が出来上がります。
PHPフレームワークを利用するメリット
様々なプログラミングでフレームワークが使われるのは、開発者にとって大きなメリットがあるからです。
ここではPHPフレームワークを利用する3つのメリットを詳しく解説します。
- 作業効率がアップする
- バグが減少する
- コードの統一性が保てる
作業効率がアップする
1つ目のメリットは「作業効率がアップする」ことです。
フレームワークを使うことによって、目的のアプリケーションを一から作る必要が無くなるため、開発工程を大幅に短縮できます。
プログラミングを始める際、何もないまっさらな状態からコードを書いていくよりも、既に骨組みが出来ている状態から始める方が負担が少ないです。
PHPフレームワークであれば、コマンドを入力するだけで簡単に作成できるため、本来は数日かかってしまうような作業も数分で完了できます。
ただし、フレームワークには独自のコードがあるため、プログラミング言語の知識だけでなくフレームワークの知識も必要です。
この点については次の章で詳しく解説します。
バグが減少する
フレームワークの利用によってプログラムの「バグが減少する」というメリットもあります。
フレームワークを使わずに一からプログラムを作ると、必要なコードが増え、プログラムを書き間違える可能性も高まります。
手動でのテストや確認作業も増え、バグの発生率が上がることが予想される一方、フレームワークを利用することで、これらのリスクを低減できるでしょう。
ユーザーが予期せぬ使い方をした場合も、バグを引き起こす恐れがありますが、フレームワークはある程度のバグを考慮して作られています。
つまり、フレームワークの利用は、バグの発生を抑えながらプログラムの品質を維持することに繋がるのです。
コードの統一性が保てる
フレームワークを利用することで、コードを統一化できる点も開発における大きなメリットです。
開発に複数人が関わる場合、人によってコードの書き方が異なるのはよくあることです。
しかし、同じプログラム内で同じ処理をするにもかかわらず、コードの書き方が異なると非常に読みにくくなり、修正にも時間がかかります。
そんな時に、フレームワークを活用すればコードの書き方やルールを統一でき、それぞれの書き方の違いを減らすことができます。
これによって、たとえ開発途中でメンバーが変わってしまっても簡単に引き継ぎが可能です。
コードが統一化されることで修正だけでなく、追加や変更も行いやすくなります。
PHPフレームワークを利用するデメリット
フレームワークを使うと、作業効率が向上したり、バグが減少したりするメリットがある一方でデメリットも存在します。
ここでは、以下の3つのデメリットを説明します。
- 学習に時間がかかる
- フレームワークに依存しすぎる
- カスタマイズが困難
学習に時間がかかる
PHPフレームワークはオープンソースなので、使おうと思えばすぐに利用できますが、フレームワークを十分に理解していないと効果的に活用できません。
これからPHPを学ぶ人は、プログラミング言語の知識に加えてフレームワークの学習にも時間を費やす必要があります。
すぐにマスターできないことから、学習に時間がかかることをデメリットと感じる人もいるでしょう。
また、フレームワークによっては、習得してもそのスキルを活かせる求人がほとんど無い場合もあります。
せっかく時間をかけるなら、仕事に役立つスキルを身につけたいと考えるでしょう。
ですから、学習を始める前に、そのフレームワークを学ぶことで得られるメリットや、求人の需要を確認することをおすすめします。
フレームワークに依存しすぎる
フレームワークを使いこなせるようになれば、それなりの機能を備えたプログラムを作れるようになります。
つまり、仕組みを理解していなくてもモノが作れるということですが、これはエンジニアとして望ましい状態とはいえません。
また、フレームワークには流行りがあり、一時的に注目を集めたフレームワークが衰退することもよくあります。
特定のフレームワークに過度に依存すると、他の開発環境では力を発揮できないことも起こりえます。
このような事態を避けるためにも、フレームワークの本質をしっかり理解した上で、作業中もプログラムの実行内容を把握しながら取り組むことが重要です。
たとえフレームワークがなくても機能を実現できることが望ましい状態です。
カスタマイズが困難
PHPフレームワークは多岐にわたる開発で利用できますが、ゼロからコードを書く場合と比較すると、カスタマイズの自由度や柔軟性は下がります。
また、全ての処理がフレームワークに組み込まれているわけではないため、フレームワークで実現が難しい場合は、自分でコードを書かなければなりません。
クライアントの要望によっては、イレギュラーな処理を追加しなければならない場合もあるでしょう。
PHPフレームワークを初めて使う人は、これらの制約に戸惑うことがあるかもしれません。
より高度な開発を行うためには、フレームワークの知識だけでなく、プログラミングの知識や柔軟な応用力など、幅広いスキルを身につけることが重要です。
仕事に役立てたいエンジニアのためのPHPフレームワーク10選
ここからは、この記事の本題を見ていきましょう。
2024年4月現在における“仕事に役立つ”PHPフレームワーク10選をご紹介します。
ご自身の目的や希望に合わせたものを選択し、ぜひ仕事に役立ててください。
Laravel
Laravel(ララベル)は、2011年に登場し、世界的に人気を博しているPHPフレームワークです。
主にWebアプリケーションの開発に活用され、その多彩な機能と高い汎用性が評価されています。
他のフレームワークと比較しても、Laravelのコードはシンプルで分かりやすいため、PHP初心者におすすめです。
また、情報量が多く日本のコミュニティも活発なため、PHPフレームワークをはじめて学ぶ人にも適しています。
プログラミングの初心者から上級者まで、幅広い層に支持されている人気のフレームワークです。
CakePHP
CakePHP(ケイクピーエイチピー)は、日本国内でも多くのWebアプリケーション・Webサービスの開発で使用されています。
プログラミング言語の1つであるRubyのフレームワーク「Ruby on Rails」の概念が取り入れられているため、「Ruby on Rails」の経験者にとっては特に使いやすいでしょう。
サーバの設定や動作環境の整備をほとんど必要とせず、手軽に導入できるのが魅力です。
さらに、日本語の学習サイトが充実しているため、初心者でも学習しやすい環境が整っています。
導入と学習のしやすさに定評のある人気のフレームワークです。
Symfony
Symfony(シンフォニー)は、フランスの会社が開発したPHPフレームワークです。
Symfonyはフレームワークがしっかり作り込まれているため、素早くWebアプリケーションを開発するというよりも、保守性を重視したプロジェクトに向いています。
そのため、個人の開発よりも企業案件で採用されることが多い印象です。
LaravelやCakePHPと比較して、「日本語化されたドキュメントが少ない」というマイナス要素はありますが、PHPを使って仕事をしたい人にとっては重要なフレームワークの1つと言えるでしょう。
Codelgniter
Codelgniter(コードイグナイター)は、比較的古い歴史を持つPHPフレームワークです。Codelgniterの最大の利点は、他のフレームワークと比べて軽量で動作が早いことです。
必要最低限の機能に絞ることで、アプリケーションのパフォーマンスを向上させています。
特に小規模のアプリケーション開発で利用されることが多いです。
また、コーディング規約が比較的少なく、自由度が高いことも多くの人に支持される理由でしょう。
Codelgniterは、動作速度を重視してWebアプリケーションを開発したい人に特におすすめです。
FuelPHP
FuelPHP(フューエルピーエイチピー)は、2010年に前述のCodeIgniterに影響を受けて誕生しました。
CodeIgniterと同様、軽量で動作が早いうえに柔軟なコーディングが可能です。
ただし、コーディングの自由度が高い分、コードの記述量が増えやすく、コードの統一性を保つことが難しくなるという課題もあります。
それでも、高速かつ軽量であることのメリットの方が大きいと言えます。
特に小〜中規模の開発に適したフレームワークです。
シンプルな機能であればFuelPHP内で完結させられる点も非常に魅力的です。
ZendFramework
ZendFramework(ゼンドフレームワーク)は、「Zend Technologies」によって作られたフレームワークです。
このフレームワークには「コンポーネント」と呼ばれる多くのライブラリが組み込まれており、プロジェクトの拡張性が高いのが特徴です。
さらに、PHP-FIG基準に準拠したオープンアーキテクチャを採用しており、大規模なWebアプリケーションの開発にも適しています。
2019年にサポートが終了しましたが、後継として「Laminas(ラミナス)」が登場し、ZendFrameworkの機能と特長を引き継いでいます。
Phalcon
Phalcon(ファルコン)は、2012年に登場した比較的新しいフレームワークです。
このフレームワークは、プログラムを役割ごとに分けるModel-View-Controller(MVC)モデルを採用しているため、並行開発がしやすくチームでの開発に向いています。
高速性・柔軟性を求める開発者にとっては特に魅力的なフレームワークです。
さらに、Phalconには公式ドキュメントが充実しており、情報も多く公開されています。
Youtube公式チャンネルもあるので、Phalconの利用を検討している方は事前に確認してみることをおすすめします。
Slim
Slimは「マイクロフレームワーク」と呼ばれる、必要最低限の機能のみを備えたフレームワークです。
一方で、LaravelやCakePHPなどの機能が豊富なフレームワークは「フルスタックフレームワーク」と呼ばれます。
Slimは最小限の機能ゆえに非常に軽量です。
また、シンプルなコードで作られているため、初心者でも理解しやすいという魅力があります。
機能が限られており、コードがシンプルであるため、学習も比較的短時間で済むでしょう。
PHPの基本的な知識があれば、すぐにでも使いこなせるフレームワークと言えます。
Yii
Yii(イー)は、海外で高い評価を受けているPHPフレームワークです。
日本ではあまり使われていませんが、海外では広く利用されています。
世界のWebサイトがどのようなツールを使っているかを調べるサイト「SimilarTech」によると、特にロシアではLaravelやSymfonyを上回り、Yiiが最も人気です。
その人気の秘密は、キャッシュ機能が優れている点にあります。
この機能は、特にアクセス負荷が大きいサービスに適しており、様々なコンテンツを一箇所にまとめて情報発信する「ポータルサイト」や、Webサイトを管理・更新するためのシステム「CMS」などに使われることが多いです。
また、Yiiはセキュリティ面でも信頼性が高く、大規模なプロジェクトに向いています。
海外では大規模な案件を中心に人気のフレームワークです。
Flight
Flightは、必要最低限の機能のみを備えたマイクロフレームワークです。
前述したSlimのようにシンプルな構造でできており、軽量かつ高速であることが最大の特長です。
また、拡張性が高く、必要に応じてライブラリを追加できます。
特にWebアプリケーションの開発に向いています。
初心者でもわかりやすいシンプルな構造に加え、わかりやすいドキュメントも用意されているため、短期間で習得できるフレームワークと言えるでしょう。
ただし、マイナーなフレームワークなので案件があまりないのが現状です。
フレームワークを選ぶポイント
ここまで10種類のPHPフレームワークを紹介しましたが、「種類が多すぎて結局どれを選べばいいか分からない」と感じた方も多いのではないでしょうか。
様々な考え方がありますが、私たちは「トレンド」「将来性」「学習のしやすさ」の3つの観点から選ぶことをおすすめします。
せっかく頑張ってフレームワークを習得しても、実際に使う機会がなければ意味がありません。
まずは、世の中で広く使われているフレームワークを知ることが大切です。
「Stack Overflow」や「Qiita」、「GitHub」などのサイトやフォーラムでは、技術情報を確認することができます。
学習のしやすさは情報量の多さから判断すると良いでしょう。
また、将来性も重要なポイントです。
特にIT業界は流行り廃りが激しいため、フレームワークの将来性をしっかり確認し、自分のプロジェクトやキャリアに最適なものを選ぶことをおすすめします。
市場のトレンドを調査
PHPフレームワークの人気度をGoogleTrendsで確認(12ヶ月分の動向)したところ、一番人気はLaravelでした。
Laravelでの検索が圧倒的に多く、その後にCakePHP、Symfony、CodeIgniter、FuelPHPが続きます。
さらに、レバテックフリーランスにて2024年1月23日時点の案件数を調べたところ、結果は以下の通りでした。
- Laravel:2,598件
- CakePHP:198件
- Symfony:45件
- CodeIgniter:64件
- FuelPHP:84件
ここからも、Laravelが多くの案件で使われていることが分かります。
これからPHPフレームワークを学ぶ方は上記も参考に検討してみてください。
今後の需要
PHPフレームワークの需要は今後も非常に高いと考えられます。
W3Techsのデータによると、Webサイトの開発は過去10年間、PHPが約8割前後を占めてきました。
このことからも需要の高さが分かります。
PHPフレームワークは、PHPの開発環境を支援するためのものであり、PHPの需要に応じて今後もその需要は高まると考えられます。
2024年3月12日には、PHPフレームワークの中で最も人気が高い「Laravel」が、新たなバージョンであるLaravel11をリリースしました。
PHPフレームワークはPHPとともに進化し続けており、今後も重要なツールとしての需要が続くでしょう。
これらのデータから常に最新の技術を取り入れることが求められます。
学習難易度
人気のPHPフレームワークの学習難易度は以下の通りです。
- Laravel
利用者が多く、ネット上には参考になる情報がたくさんあります。コードがシンプルであることからも比較的難易度は低いと言えるでしょう。一方で、自由度が高いため複雑化してしまうこともあります。コードの意味や書き方を正しく理解しましょう。 - CakePHP
導入のしやすさに定評があるCakePHPも難易度は低めです。日本語の学習サイトが豊富にあり、参考文献も充実しているため、学習もしやすいでしょう。 - Symfony
初心者にはやや難易度が高いかもしれません。しかし、保守性が高く企業のプロジェクトに向いています。大きなプロジェクトで活躍したい方は学んでおきたいフレームワークです。 - CodeIgniter
シンプルなコードで難易度はそれほど高くありません。PHPの基本知識があれば概要を理解できるでしょう。速度を重視している方はぜひ学びたいフレームワークです。 - FuelPHP
直感的で使いやすい機能が特徴のFuelPHPも難易度は低いと言えます。
コーディングの規約が少ないため、比較的学習コストもかかりません。
上記の通り、人気のPHPフレームワークの学習難易度はそこまで高くありません。
ご自身の学習の目的と割ける時間を照らし合わせて、ベストなフレームワークを見つけてみてください。
最適なPHPフレームワークを身につけて効率よい開発を実現しよう
本記事では、“仕事に役立つ”PHPフレームワーク10選をお届けしました。
これらのフレームワークは、業界のトレンドや将来性、学習のしやすさなどの観点から検討しました。
例えば、Laravelは現在のPHP開発の主流であり将来性も高いとされています。
Symfonyは大規模プロジェクトに適しており、学習のハードルは高いものの将来的なキャリアの拡大に繋がると考えられます。
一方、FuelPHPは学習コストが低く、初心者にもおすすめです。
これらの観点を踏まえて、自分の目的に合う最適なPHPフレームワークを選択してください。
この記事がPHPフレームワークを学ぶ皆さんの参考に少しでもなれば幸いです。