企業だけでなく個人においてもIT化が進む昨今では、パソコンやスマホなど情報を伝達するためのネットワークが必要不可欠です。
また、ネットワークは社会インフラとしても重要になるため、快適性や安全性も求められます。
しかし、機器の故障・断線や設定ミスなどが原因でネットワーク障害が起きれば、ビジネスだけでなく社会にも大きな影響を与えかねません。
このような事態を防ぎ、快適かつ安全な通信環境を構築するのがネットワークエンジニアです。
「ネットワークエンジニアはどんなスキや資格が必要なのか?」
「具体的にどのような仕事内容なのか?」
など気になる方もいるでしょう。
そこで、本記事ではネットワークエンジニアを目指す方や転職を考えている方に向けて、仕事内容や年収、将来性について詳しく解説していきます。
ネットワークエンジニアとは
ネットワークエンジニアの主な役目は、ネットワークの設計・構築・運用・保守です。
ネットワークを使用し情報伝達を行うには、サーバー・端末をネットワークでつなぐ必要があります。
ネットワークエンジニアは、ユーザーにとって快適かつ安全な情報伝達ができるようサポートする存在です。
例えば、有線の場合はケーブルの断線を防ぐ配線方法の提案や、ネットワーク障害が起きた際には迅速に原因を追求し解決に向けた対応が求められます。
小規模の場合は、設計・構築・運用・保守まで1人のネットワークエンジニアが担当しますが、大規模になるとチームを組んで対応する場合もあります。
ネットワークエンジニアの仕事内容をご紹介
ネットワークエンジニアの仕事内容は、大きく分けて「要件定義・設計・構築・運用/監視・保守」の5つに分類されます。
まずは、ネットワークエンジニアの仕事内容をそれぞれに解説していきます。
要件定義
要件定義とは、ユーザーの要望をヒアリングし提案をまとめることです。
ユーザーによって求めるネットワークの規模や環境が異なるため、ヒアリングを行い必要な機材を明確化します。
次に、ユーザーの要望に基づき見積もりを作成したり、スケージュールを設定したりするのもネットワークエンジニアの仕事です。
必要な機材・予算・スケージュールなどをまとめ、要件定義書を作成します。
ここで重要となるのが、ユーザーの同意が得られる要件定義書を作成できる能力があるかです。
ユーザーの同意が得られなければプロジェクトが立ち行かなくなるため、ネットワークエンジニアのスキルが問われる重要なフェーズとなります。
ネットワーク設計
ネットワーク設計には「基本設計」と「詳細設計」の2つの段階があります。
- 基本設計:安定したネットワークの実現に向けて、必要な機器・システム・機器の配置・サーバーなどを検討
- 詳細設計:基本設計を元にIPアドレス・機器のパラメータ・通信速度を設定
基本設計では全体の骨組みを決め、詳細設計で肉付けしていくイメージです。
ネットワークが複数の場合には個別に設計書が必要になるため、工程の詳細を記載する手順書が必要になる場合もあります。
また、詳細設計では全ての情報を記載しなければならないため、作成する資料も多くなるのが特徴です。
ネットワーク構築
ネットワーク構築は、設計を元にユーザーがネットワークを使用できる状態にする業務です。
まずは、設計書通りに機器の設定を行いネットワークに接続し問題なく使用できるかテストします。
テストは、いくつかのパターンを作成しそれぞれに実施するのも特徴です。
パターンの例を見ていきましょう。
- 単体テスト:機器を単体で起動し正常に動作するか確認する
- 結合テスト:機器同士を繋ぎ正常に動作するか確認する
- 性能テスト:同時接続での負荷や遅延の有無を確認する
- 総合テスト:実際の環境で接続し正常に動作するかを確認する
上記は一例ですが、それぞれの環境に合わせて仕様を作成しテストを実施します。
ネットワークの運用・監視
ネットワークは構築したら終わりではなく、ユーザーに引き渡した後の運用・監視もネットワークエンジニアの仕事です。
ネットワークが正常に動作しているか・安定しているかなど、運用のサポートと監視業務も担います。
例えば、ネットワーク障害が起きた場合は、速やかに原因を追求し問題解決に向け対応しなければなりません。
新たな機器の追加や廃棄があった場合はネットワークの修正を行います。
ネットワーク管理者の権限変更や、新たなユーザー登録などの定例業務もネットワークエンジニアの仕事です。
ネットワークの保守
ネットワークの保守は、ネットワークに何らかの問題が起きたときに使える状態までの復旧と、使えなくなった機器の交換が主な業務です。
ネットワークにはさまざまな障害が起きることが想定されますが、いかなる場合でもユーザーへの影響を最小限に抑える必要があります。
また、ネットワーク保守には、復旧・機器の交換などに加えて、セキュリティ管理も重要です。
例えば、企業においてネットワーク障害が起きた場合は、業務遂行がかなわず多大な損失を出す可能性があります。
このような場合は、夜間や休日であっても迅速な対応をしなければなりません。
ネットワークエンジニアに必要なスキル
ネットワークエンジニアの業務内容は多岐にわたるため、専門的な知識やスキルが求められます。
ここでは、ネットワークエンジニアに求められる、構築・セキュリティ・クラウドサーバーでのインフラ構築のスキルについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
ネットワーク構築に関するスキル
ネットワーク構築に関するスキルでは、「WAN系・LAN系・インターネット系」といったインターネット機器の接続・設定に関連する知識が求められます。
WAN系に関しては需要が低いものの、ネットワークエンジニアとして働くのであれば知識として持っておきたいスキルです。
LAN系・インターネット系のスキルは、ネットワーク設定に欠かせないものであり、ネットワークエンジニアには必須となります。
また、ネットワーク構築に関するスキルは、障害が起きた場合に全体像を見ながら論理的に考え対処するのに欠かせないものといえるでしょう。
WAN系 | ITUで規格化されたもの | ADSL・CATV・IP-VPN・広域イーサネット・拘束デジタル回線など |
LAN系 | IEEEで規格化されたもの | 無線LAN・LANスイッチイーサネット・ルーティングなど |
インターネット系 | IETFで規格化されたもの | メール・DNS・wwwサーバ・アプリケーションサーバなど |
ネットワークセキュリティに関するスキル
ネットワークがインターネットに接続している以上、サイバー攻撃などの外部攻撃のリスクがあります。
企業においては、外部からの不正アクセスによる機密事項の情報漏洩を防ぐための対策が必要不可欠です。
また、個人においても個人情報の漏洩といったリスクがあることに変わりありません。
ネットワークエンジニアは、さまざまなリスクからユーザーを守るために、IPSやファイアウォールといった専門的な知識も求められます。
また、万一トラブルが発生した場合にも、ネットワークセキュリティの知識があれば迅速な対応が可能になるでしょう。
クラウドサーバーでのインフラ構築のスキル
クラウドサーバーでのデータ管理は、運用コストの削減や場所を問わずどこでも利用できるといったメリットがあるため、多くの企業や個人でも導入されています。
しかし、企業におけるITインフラでは、インフラ構築のスキルが必要不可欠です。
クラウドサーバーでのデータ構築が完了しても、正常に機能するかのテストや、安定した運用が可能であるかなど総合的な監視やサポートも求められます。
クラウドサーバーでのインフラ構築は、今後も需要が高まると見られているので、ネットワークエンジニアを目指すのであれば必要なスキルです。
ネットワークエンジニアが取るべき資格はある?
ネットワークエンジニアは資格がなくても働けますが、資格を取得していれば自身のスキルを証明できる武器になります。
また、資格取得のために身につけた知識は、自身にとっても財産になるでしょう。
ここでは、ネットワークエンジニアが取るべき資格について解説していきます。
基本情報技術者
基本情報技術者とは、ITに関する幅広い知識を持つことを証明する国家資格です。
IT関連企業で働く人やエンジニアの多くが基本情報技術者の資格取得を目指すことから、ITエンジニアにとっての登竜門とも言われています。
資格試験では、システム開発に関わる内容やネットワーク、セキュリティまで広範囲にわたり出題されるのも特徴です。
基本情報技術者の資格を取得していれば、ネットワークエンジニアに必要な基礎知識を持つ証となります。
IT企業では、新人教育の一環として基本情報技術者の資格取得を推奨しているところも増えているので、就職や転職時にも有利となるでしょう。
応用情報技術者
応用情報技術者は、基本情報技術者の上位資格と言われる国家資格です。
ネットワークエンジニアを始めとして、ITエンジニアの多くが目指す資格としても知られています。
応用情報技術者試験に合格するには、さらに広範囲の知識と専門性が求められるため難易度も上がるのが留意点です。
しかし、資格を取得すればデータベースやネットワーク・セキュリティやシステム監査など応用力があることの証になります。
ネットワークエンジニアの転職にも有利な資格となるでしょう。
受験資格はありませんが、応用情報技術者を目指すのであれば、基本情報技術者の次に目指した方が合格確率が上がります。
ネットワークスペシャリスト
ネットワークスペシャリストは、応用情報技術者よりもさらに上の高度区分とされる国家資格です。
情報処理技術者試験では最も難易度が高いことでも知られています。
ネットワークスペシャリスト試験の受験資格はありませんが、合格率が10%台となるため、先に応用情報技術者を取得し、次にネットワークスペシャリストを目指すのが一般的です。
ネットワークスペシャリストの資格を保有していると、ネットワークに特化した知識を持つ証となります。
ネットワークエンジニアとしてキャリアアップを目指すのであれば、ネットワークスペシャリストの取得は必須となるでしょう。
ネットワークエンジニアの年収はどれくらい?
ネットワークエンジニアの平均年収は、約455万円です。
(参照:マイナビ|職種別平均年収ランキング | IT・インターネット・通信 ネットワークエンジニア)
IT関連企業での平均年収が542万円に比べると、若干低いようにも思えます。
(参照:マイナビ| 職種別平均年収ランキング | IT・インターネット・通信 製品開発・研究開発)
ネットワークエンジニアは年代でも年収が大きく変わるため、全体の平均年収にも影響しているようです。
年代別の平均年収で見た場合、20代では376万円、30代では554万円とかなり差があります。
(参照:マイナビ|職種別平均年収ランキング | IT・インターネット・通信 ネットワークエンジニア)
40代や50代になれば、経験も増えるため平均年収は600万円~700万円も夢ではありません。
ネットワークエンジニアの平均年収は、勤務先によっても変わります。
- 中小企業:400~600万円
- 大手企業:700~800万円
- 外資系企業:800~1,000万円
ネットワークエンジニアとして年収アップを目指すのであれば、大手企業や外資系企業への転職も選択肢の一つです。
ネットワークエンジニアの将来性に迫る
2022年9月~2023年2月のネットワークエンジニアの中途採用情報では、登録者数は横ばい状態が続いているものの求人件数は増えています。
(参照:doda|2023年3月発行・職種別マーケットレポート・ITエンジニア)
世界的に見てもIT化が進んでいることから、今後もネットワークエンジニアの需要は高まると見ていいでしょう。
ただし、ネットワークエンジニアの需要が増えるのは、それだけ競争率も上がるということです。
求人があっても、専門的な知識やスキルを持つネットワークエンジニアが求められると考えられます。
ネットワークエンジニアは将来性が期待できる仕事ですが、企業が求めるのは総合的なスキルを持つ人材へとシフトしていくでしょう。
ネットワークエンジニアは今後も活躍できる職種
多くの企業では、オンプレミスサーバーからクラウドサーバーへ切り替える傾向が見られます。
これに伴い、オンプレミスを主体とするネットワークエンジニアの需要は下がりつつありますが、クラウドサーバーに関する知識やスキルがあれば今後も需要は高まるでしょう。
また、ネットワークエンジニアが活躍するのは、IT企業だけとは限りません。
ゲーム業界でもオンライン化が進んでいるため、ネットワークエンジニアの需要は高まると考えられます。
オンラインゲームには、セキュリティ対策も欠かせません。
さらに、オンラインゲームには定期的なアップデートや課金システム、アカウント管理などネットワークエンジニアが活躍できるチャンスがあります。
よくある質問
それでは最後に、ネットワークエンジニアにまつわるよくある質問と回答を紹介していきます。
これからネットワークエンジニアを目指す方や、ネットワークエンジニアに興味がある方はぜひ参考にしてください。
ネットワークエンジニアのキャリアパスにはどのようなものがありますか?
ネットワークエンジニアのキャリアパスは、大きく分けて「上流工程・スペシャリスト・ネットワークコンサルタント」の3つの選択肢があります。
またそれぞれのキャリアパスを実現するには必要なスキルもあるので、将来自身がどの方向に進みたいのかを考えてから決めることが大切です。
種類 | 必要なスキル | キャリアパスに必要な年数 |
上流工程 | ネットワーク構築ネットワーク設計 | 2~5年 |
スペシャリスト | セキュリティ全般ソフトウェア クラウド プロジェクトマネジメント コミュニケーション |
2~10年 |
ネットワークコンサルタント | プロジェクトマネジメントネットワーク診断 プロジェクトマネージャー ITコーディネーター |
2~10年 |
時間はかかりますが、いずれキャリアアップを視野に入れているのであれば、スペシャリストやネットワークコンサルタントを目指すといいでしょう。
ネットワークエンジニアはやめとけという声もありますが、なぜですか?
ネットワークエンジニアは夜勤が多く、場合によっては24時間365日体制での業務になることも珍しくありません。
ネットワーク障害で早急な対応を求められた場合には、問題が解決するまで帰宅できないこともあります。
基本的にトラブルが起きなければルーチンワークとなるため、仕事に飽きやすいのもネットワークエンジニアはやめておけと言われる理由です。
大手企業や外資系企業であれば年収アップも夢ではありませんが、そうではない場合年収アップは望めないでしょう。
こうした理由から、ネットワークエンジニアはやめておけと言われているのです。
ただし、業務が不規則でも気にならない方、ルーチンワークが苦にならない方、空き時間を利用して資格取得に向けた勉強を頑張れる方であれば、ネットワークエンジニアに向いているといえます。