プログラミングの世界には、作業を効率化し、より洗練されたアプリケーションを構築するための多くのツールが存在します。
その中でも「フレームワーク」と「ライブラリ」という二つの用語は、初心者にとって混同しやすく、分かりにくいものです。
この2つの違いを理解することは、プロジェクトの開発と成功に不可欠といってもいいでしょう。
そこで本記事では、フレームワークとライブラリの基本的な違いを解説し、言語別にフレームワークとライブラリを紹介していきます。
現在、フレームワークとライブラリの違いがよく分からないという方はご一読ください。
フレームワークとライブラリの違い
フレームワークとライブラリの違いをざっくり言うと以下の通りです。
- フレームワーク:アプリケーションの設計や実装の基本的な枠組み
- ライブラリ:よく使われる機能の部品
フレームワークは、プログラム開発において共通の作業を効率化するための基本的な構造や設計パターンがあらかじめ提供されているものです。
これにより、開発者は繰り返し発生する問題を解決するために、一からコードを書く必要がなくなります。
一方、ライブラリはプログラムに関する機能の部品のようなもので、アプリケーションの開発に必要なコードを短縮するために使用するものです。
よく利用される機能やコードを再利用しやすいようにまとめているため、開発者は同じコードを何度も書く必要がなく、効率的にプログラム開発ができます。
フレームワークを理解しよう
フレームワークは、プログラム開発の効率を上げるために必要不可欠なツールです。
そのため、フレームワークについて深く理解した上で活用しなくてはいけません。
そこでここでは、フレームワークについての解説と、メリットとデメリットを紹介します。
フレームワークとは何か
フレームワークとは、ソフトウェアの設計や実装の基本的な枠組みのことで、アプリケーションの開発を効率化するために使用されます。
アプリケーションの基本的な構造や機能があらかじめ用意されているため、開発者はゼロからコードを入力する必要がありません。
そのため、開発者は余計なコード入力が省け、アプリケーションの独自の機能に集中できます。
フレームワークの例としては、Webアプリケーション開発のDjangoや Ruby on Rails、ゲーム開発のUnityやUnreal Engineなどが有名です。
フレームワークを活用することで、開発者はより短時間でより高品質なアプリケーションを開発できます。
フレームワークを利用するメリット
フレームワークは、アプリケーション開発を効率化し品質を向上させるために欠かせないものであり、以下のようなメリットがあります。
- 開発を効率化できる:開発者は共通の機能や設定をあらかじめ備えた状態で効率よく開発できる
- プログラムの書き方を統一しやすい:一定の記述ルールが提供されるため、プログラムの書き方を統一しやすくなる
- エラーを解析しやすい:エラーやバグの原因を特定しやすい機能が備わっているため、改修がしやすい
- 多くのサービスで利用されている:ほぼ全てのサービスで利用されており、プログラミング学習においても欠かせない存在
フレームワークの学習には時間がかかりますが、開発効率化の向上と品質向上の両面でメリットがあります。
フレームワークを利用するデメリット
フレームワークを利用するデメリットは、以下の3つです。
- 開発の自由度が低くなる:枠組み(構造)が決まっているため、開発者の創造性や柔軟性が制限される
- 学習コストがかかる:複数のフレームワーク習得には時間とコストがかかる
- プログラミングスキルの向上が妨げられる:同じフレームワークに頼ると他のプログラミングスキルが身に付かない可能性がある
フレームワークは、開発者の効率化と品質向上に役立つツールですが、デメリットも理解した上で、適切に活用することが大切です。
ライブラリを理解しよう
フレームワークと合わせて、ライブラリは効率的な開発を実現するための重要なツールです。
しかし、初心者にとってライブラリは複雑に感じられ、フレームワークとの違いが分からない人がいるかもしれません。
そこでここでは、ライブラリについての解説と、メリットとデメリットを紹介します。
ライブラリとは何か
ライブラリは開発者のプログラミングの手助けをするという点ではフレームワークと似ていますが根本的に違うものです。
これを自動車に例えると、フレームワークが自動車のフレーム(ボディ枠)なのに対し、ライブラリは自動車の数多くある部品に例えられます。
ライブラリは、プログラム開発でよく使われる機能を再利用しやすくまとめたもので、開発の効率化に貢献するツールです。
これらはプログラムの「部品」として機能し、単体では動作せず、開発者が自分のアプリケーションに組み込んで使用します。
フレームワークとは異なり、ライブラリは特定の機能や処理を提供することに特化しており、利用者が自由に選択して使用する点が特徴です。
ライブラリを利用するメリット
ライブラリを利用するメリットには以下のようなものがあります。
- 開発の効率化:すでにコードが用意されているため、開発者が一からコードを作成する必要がない
- 品質の向上:開発者によるテストや検証済みなのでコード品質が向上する
- 拡張性の向上:他のライブラリやプログラムと組み合わせて使用できる
このように、ライブラリはプログラミングの効率化と品質向上に役立つツールです。
ライブラリを利用するデメリット
ライブラリには、プログラミングの部品の役割があり、必要に応じて再利用できるメリットがありますが、以下のようなデメリットも理解しておく必要があります。
- 動作の理解が難しい:複雑な機能が多く、内部動作の理解には時間がかかるため、トラブルの際に原因特定が難しい場合がある
- 依存関係によるリスク:ライブラリ同士が依存していることが多く、依存関係が複雑だとバージョン管理やアップデートが困難になる
- 柔軟性の低下:凡用性のために設計されているため、特定ニーズに合わせたカスタマイズが難しい場合がある
- ライブラリの廃止:開発者の都合で廃止される可能性があり、廃止ライブラリを使い続けるとプログラムが動作不良する可能性がある
- セキュリティリス:オープンソースが多く、セキュリティリスクを考慮する必要がある
ライブラリを利用する際は、これらのデメリットを理解した上で、メリットとデメリットを比較検討することが重要です。
言語別の代表的なフレームワーク
開発を効率化するためには、プログラミング言語ごとにフレームワークを使い分けることが重要です。
ここでは、代表的な言語とフレームワークの組み合わせを5つ紹介します。
PHP
PHPのフレームワークは、データベースの接続や、ユーザー認証、セッション管理などの機能があらかじめ備えられています。
ここでは、PHPの主なフレームワークを2つ紹介します。
- Laravel
Laravelは、Web開発に人気のフレームワークで、比較的学習が容易で使いやすいため、初心者にもおすすめです。
また、大規模なWebアプリケーションの開発にも適しています。
- CakePHP
CakePHPは、2005年にリリースされたオープンソースのPHPフレームワークです。
PHPでのWebアプリケーション開発を高速化することを目的としており、コンベンションの使用により、開発者が書くコードの量を減らすことができます。
コンベンションとは、コードの書き方に統一されたルールを設けることです。
また、CakePHPには、大規模なコミュニティとオンラインで利用できるドキュメントが豊富にあります。
Ruby
Rubyは、Webアプリケーション開発に人気の高いプログラミング言語です。
開発効率をさらに高めるために、多くのフレームワークが用意されています。
Rubyのフレームワークでよく利用されるのは以下の2つです。
- Ruby on Rails
Ruby on Railsは、世界中で最も人気のあるRubyのフレームワークで、豊富な機能が搭載されているため、開発を効率化しやすいのが特徴です。
また、初心者でも比較的学習しやすく、初めてフレームワークを触る方にもおすすめできます。
- Sinatra
Sinatraは、軽量でシンプルなフレームワークで、Ruby on Railsよりも学習コストが低いのが特徴です。
どちらかというと、大規模より小規模なWebアプリケーション開発に適しています。
開発者にとっては、拡張性が高く、自由度の高い開発が可能なため、自分のペースで進められるのがメリットです。
Java
Javaは、Webアプリケーション開発からモバイルアプリ開発まで、幅広い用途で使用できるプログラミング言語です。
Javaの主なフレームワークは以下の2つです。
- Spring Framework
Spring Frameworkは、Javaで最も人気のあるフレームワークです。
大規模なコミュニティと豊富なドキュメントがあるため、初心者でも比較的学習しやすいといえます。
豊富な機能が標準搭載されており、開発スピードを大幅に向上できるのがメリットです。
- Struts
Strutsは、軽量でシンプルなフレームワークで、Spring Frameworkよりも学習コストが低いため、初心者におすすめです。
コード量が少なく保守しやすい特徴があり、小規模なアプリケーション開発に向いています。
Python
Pythonは、Webアプリケーション開発からデータ分析まで、幅広い用途で使用できるプログラミング言語です。
Pythonフレームワークには主に以下の2つがあります。
- Django
Djangoは、Pythonで最も人気があるフレームワークで、開発に必要な機能が初めから備わっているため、開発の効率化とスピードアップができるのが特徴です。
また、拡張性の高いフレームワークなので、AIや複雑なアプリケーション開発も行えます。
人気のフレームワークなため、学習テキストも充実していますが、細かい設計のフレームワークであることから学習難易度は高いです。
- Flask
Flaskは、Pythonの中では軽量でシンプルなフレームワークで、最小限の機能だけを備えているため、開発者がカスタマイズしやすいのが特徴です。
また、シンプルで扱いやすいため、個人ブログや小規模サイトなどの開発にも適しています。
Djangoと比較すると学習テキストは充実してはいませんが、シンプルな構造のため、覚えるコードも少なく初心者でも学習しやすいフレームワークです。
JavaScript
JavaScriptは、Webページに動きや機能を追加するためのプログラミング言語です。
ブラウザでもモバイルでも動作するため、多くの開発で使われています。
JavaScriptの主なフレームワークは以下の2つです。
- Vue.js
Vue.jsは、WebサイトのUI部分を開発する際に使われるオープンソースのフレームワークです。
元Googleエンジニアのエヴァン・ヨー氏によって開発され、シンプルながら拡張性が高い特徴があります。
Vue.jsは、HTMLやJavaScriptの知識があれば比較的学びやすいため、学習コストを抑えられるのがメリットです。
Vue.jsは、小規模から中規模のプロジェクトに適している反面、大規模なプロジェクトやネイティブアプリ開発には不向きな場合があります。
- Angular
Angularは、Webアプリケーションを作るためのフレームワークです。
Googleが開発しており、大規模なアプリケーションの開発に向いています。
Angularを使いHTMLのテンプレートに特別なタグを追加することで、静的なページに動的な機能を簡単に組み込むことができます。
主なAngularの使用例としては、企業のWebサイト・ECサイト・モバイルアプリ・SNSなどです。
言語別の代表的なライブラリ
Web開発は日々進化を続けており、より効率的で高機能な開発を実現するために、さまざまな言語とライブラリが活用されています。
ライブラリが使われる主なプログラミング言語は以下の5つです。
PHP
PHPは、WebサイトやWebアプリケーション開発に広く利用されているプログラミング言語です。
他の言語と比べて構文がシンプルで、コードの記述量が少ないため、初心者が学習しやすいといえます。
また、オープンソースのため、開発コストが抑えられるのがメリットです。
ここではPHPで使われるライブラリを2つ紹介します。
- PHPMailer
PHPMailerは、PHPでメール送信を行うための便利なオープンソースライブラリで、多くのPHP開発者に利用されているため、知らない人はいないというぐらい有名です。
安全にメール送信や添付ファイル送信など、様々な機能が利用できます。
設定は複雑というデメリットがありますが、豊富なサンプルコードや日本語ドキュメントが用意されているため、初心者でも比較的簡単に使い始めることができます。
PHPMailerの用途は、「お問い合わせフォームからのメール送信」「会員登録完了メール送信」「パスワードリセットメール送信」などです。
- class.upload.php
class.upload.phpは、PHPでファイルのアップロード処理を行うためのオープンソースライブラリです。
比較的操作が簡単で、多機能で安全、そして無料なので、初心者が始めるにも最適なライブラリといえます。
また、動作が軽快で、サーバーへの負荷が少ないのがメリットです。
class.upload.phpの主な用途は、「画像アップロード」「ファイルアップロード」などがあり、ファイルサイズの変更やラベルの作成などの編集機能も追加できます。
Ruby
Rubyは、日本人のまつもとゆきひろ氏によって開発された、オブジェクト指向プログラミング言語で、
そのRubyで利用できる機能やツールをまとめたものがRubyライブラリです。
Rubyライブラリは Ruby Gemとも呼ばれ、以下のような Ruby Gemを利用することで、プログラミング開発を効率的に進めることができます。
- devise
deviseは、Railsアプリケーション用の柔軟な認証を実装できるライブラリです。
deviseを使用すると、ユーザー登録・セッション管理・パスワードのリセット・確認メール送信など、認証に関連する機能を簡単に追加できます。
- Kaminari
Kaminariは、Webサイトのページネーションを簡単に実装するためのライブラリです。
ページネーションとは、データをページごとに分割して表示することで、ユーザーが大量のデータを効率的に閲覧できるようにする技術を指します。
また、Gemをインストールするだけで、モデルのページネーションの準備が整うため、特別な設定やモデルへの定義は必要ありません。
Kaminariは、Railsアプリケーションにおけるデータのページネーションを容易にし、開発者がより良いユーザー体験を提供するのに役立つツールです。
Java
Javaのライブラリには標準とサードパーティがあり、標準ライブラリには日付や数学計算などの基本的な機能が含まれ、サードパーティライブラリは、特定のタスクを容易にこなすために使われます。
Javaの主なライブラリは以下の2つです。
- Swing
Swingは、JavaでGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を作成するためのライブラリです。
GUIとは、ユーザーがアイコンやボタンなどを用いて直感的に分かりやすくコンピュータに指令を出すことを指します。
ウィンドウ・ボタン・テキストフィールドなどのプログラム部品を持つアプリケーションを開発することがSwingの主な役割です。
また、軽量で強力なプログラム部品を提供し、多くのプラットフォームで同じように閲覧できるよう設計されています。
- OpenCV
OpenCVは、Intel社が開発したオープンソースライブラリで、画像処理を行うために使われます。
Java以外にも、C++・Pythonなどの様々なプログラミング言語で利用可能であり、Windows・MacOSなど多くのプラットフォームで動作可能です。
OpenCVでは、顔認証・物体認証などの認証機能や、画像の読み込み・画像フィルタなどが容易に行えます。
OpenCVは構造がシンプルかつ動作が軽快なため、開発者の中では使いやすいと評判であり、また、その使いやすさから、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンにも利用されています。
Python
開発者の中で非常に人気があるプログラミング言語がPythonです。
そのシンプルさと読みやすさにより、初心者にも扱いやすいといわれています。
多様な用途で使用され、Web開発・データサイエンス・機械学習・自動化スクリプトまで幅広い分野で使われているプログラミング言語です。
Pythonのライブラリには以下のようなものがあります。
- sys
sysライブラリは、Pythonインタプリタや実行環境を管理・操作するための標準ライブラリです。
インタプリタとは、コンピュータ処理方法のひとつで、プログラム実行時にコードを1行ずつ機械語プログラムに変換することを指します。
プログラムの途中で終了させる「sys.exit()」など、システム固有のパラメータや関数を制御する機能を提供するのが特徴です。
sysを使うことで、システムの振る舞いを制御するだけでなく、インタプリタに関連する情報にアクセスし、コマンドライン引数を扱うことが可能になります。
- datetime
datetimeは、Pythonの標準ライブラリで、日付や時間を扱うための機能を提供します。
datetimeを使用すると、現在の日付や時刻を取得したり、日付や時刻の計算を行ったりすることができます。
例えば「datetime.datetime.now()」を使用すると、現在の日付と時刻が取得でき、「datetime.timedelta」を使用すると、日付間の差分を計算できます。
このようにdatetimeでは、日付や時間に関連するさまざまな操作を簡単に行うことができます。
JavaScript
JavaScriptはウェブページを動的にするためのプログラミング言語です。
HTMLとCSSと共に、Webの3大技術の一つであり、ユーザーのアクションに応じてページの内容を更新したり、インタラクティブな機能を実装したりすることができます。
サーバーサイドでの開発にも使われ、幅広い用途に対応できるため、初心者でもWeb開発の入門として親しみやすい言語です。
JavaScriptでのライブラリは以下のようなものがあります。
- D3.js
D3.jsは、データを視覚化してWeb上で表現するためのJavaScriptライブラリです。
D3.jsはデータを直感的な形式で表示してユーザーの理解を助けるために設計されています。
主な使用例は、グラフやチャートの表示、地図上のデータ表示や地理的なイベントの可視化などです。
また、活発な開発者コミュニティがあるため、初心者でも学習しやすく、サポート体制も充実しています。
- jQuery
jQueryは、Web開発で頻繁に行われるタスクを簡単に実行するための軽量なライブラリです。
DOM(Document Object Model)の操作・イベントハンドリング・アニメーションの追加・Ajaxの簡単な使用などの機能を提供し、ブラウザ間の互換性の問題を抑えながら、コードの書き込みを容易にします。
jQueryを使えば、Webサイトに動きをつけるアニメーションや、クリックしたときに何かのアクションを起こす操作が簡単にできるようになります。
また、コードをたくさん書く必要がないため、開発者は手間をかけずに迅速な作業ができるのがメリットです。
- React.js
React.jsは、Facebookが開発したオープンソースのJavaScriptライブラリです。
React.jsには、画面を小さな部品に分割して開発できるという特徴があります。
これは例えると、レゴブロックを組み合わせてひとつのものを作りあげるようなものです。
Reactでも、小さな部品を組み合わせることで、複雑な画面を作ることができます。
また、React.jsは、コードの記述量が少なく、読み込みやすいコードを書けるため、初心者にとって学習しやすいのがメリットです。
React.jsはオンラインチュートリアル・書籍・動画などで学習できますが、学習コストを抑えたいなら、無料で始められるオンラインチュートリアルをおすすめします。
それぞれの違いや役割を理解して仕事に役立てよう
フレームワークとライブラリは似ているようで全く異なるものです。
フレームワークがアプリケーションの全体的な構造(枠組み)を提供してくれるものに対し、ライブラリは開発者がコードに組み込んで使用する機能を揃えた集合体といえます。
フレームワークとライブラリを上手く組み合わせ、高品質なプログラム開発に取り組みましょう。