新規顧客を開拓するには、それぞれの見込み客が持っている興味や関心、その行動に対して最適な情報を最適なタイミング、方法で提供するマーケティング活動が重要です。
適切なマーケティングによって顧客との良好な関係が構築されれば、中長期での売り上げ構築にも役立ちます。
しかし、これを実現するには多くの人員が必要となります。
マーケティング施策を行って見込み顧客をフォローしたくても手が回らないと悩んでいる企業も多いのが現状です。
そこで、人的なマーケティングのオペレーション部分を効率化・自動化するために開発されたのが、マーケティングオートメーションです。
本記事では、マーケティングオートメーションの概要やメリット・デメリットについて解説します。
マーケティングオートメーション(MA)とは?
マーケティングオートメーション(MA)とは顧客開拓におけるマーケティング活動を可視化・自動化する一連のプロセスを指します。
それらを実現するツールのことをMAツールと呼びます。
見込み顧客自身の個人情報や各種情報の一元管理・育成を行い、さらにはホットリード(購買意欲の高い見込み客)の絞り込みまでの活動を自動的(効率的)に行うことが可能です。
つまり、MAを駆使すればマーケティングにおける生産性をより高めることができます。
最近では、営業活動のデジタル化の一環としてMAツールを導入するケースが増えています。
理由としては、コロナの影響で従来の営業活動が実施できなくなったことで、テクノロジーを活かした営業活動にシフトする必要が出てきたからです。
マーケティングオートメーション(MA)でできること
ここまでは、MAツールを使うと顧客開拓の仕組作りを効率化できることを解説しました。
では、具体的にはどんなことができるようになるのでしょう?
MAでできることとして、以下の3つに分けて解説します。
- 見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)
- 見込み顧客の教育(リードナーチャリング)
- 見込み顧客の選別(リードクオリフィケーション)
見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)
MAでできることの1つ目は、見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)です。
リードジェネレーションとは、0から顧客を生み出す活動です。
将来的に顧客となる可能性を秘めたリード(見込み顧客)を大量に獲得するための機能で、二つに大きく分類されます。
一つは、製品やサービスを認知していないユーザーに認知してもらうための機能(認知前)です。
もう一つは、一度でも製品やサービスと接点を持ったことのあるユーザーにアプローチして個人情報を開示してもらうための機能(認知後)です。
具体的には、SNSの活用による認知拡大で自社のWebサイトへの誘致を図ったりすることが認知前の活動にあたります。
そして、自社Webサイトを訪れたことのあるユーザーにプッシュ通知を送信して再訪問を促したりといったことが認知後の活動にあたります。
見込み顧客の教育(リードナーチャリング)
MAでできることの2つ目は、見込み顧客の教育(リードナーチャリング)です。
リードナーチャリングは、獲得した見込み顧客に対してメールや電話・ポップアップやプッシュ通知などを活用して、購買意欲を高めていく活動です。
簡単に説明すると、製品・サービスに触れて「まだ検討を始めたばかり」という段階の顧客の購買意欲を高めて、「購入したい」という段階までもっていくために施策を行うことをいいます。
リードナーチャリングを効果的に行うためには、見込み顧客の属性や嗜好、検討度合いなどの情報を適切に把握しておくことが大事です。
こうした情報をMAツールを用いて管理し、必要なタイミングで活用することでより効果の高いマーケティング活動が行なえます。
見込み顧客の選別(リードクオリフィケーション)
MAでできることの3つ目は、見込み顧客の選別(リードクオリフィケーション)です。
リードクオリフィケーションとは、見込み顧客の中から顧客となりそうな候補を絞り込んで、営業担当者へと引き渡すことをいいます。
見込み顧客から更に絞り込みを行い、より製品・サービスに強い興味や関心を持つ見込み顧客をリストアップ(ホットリードリスト)して購入率を高めるのが目的です。
このホットリードリストを作るのに、MAツールのスコアリング機能が活用されます。
スコアリングとは、個々の見込み顧客の属性や行動履歴などを元に購入確率を推測するための機能です。
見込み顧客の属性や興味・関心・行動に応じて点数(スコア)を加算し、このスコアを基準として見込み顧客の成熟度(購買意欲)を判断するという手法です。
マーケティングオートメーション(MA)を導入するメリット
見込み顧客への働きかけを行えるMAはマーケティング活動に様々なメリットをもたらします。
アナログだけでなくデジタルで顧客と接点をもつことができるようになった今だからこそ、MAを導入する効果は高いです。
ここからはMAを導入するメリットを3つ紹介します。
- マーケティング業務の効率化
- 新規顧客獲得に依存しなくなる
- 見込み客の取りこぼしを防ぐことができる
マーケティング業務の効率化
インターネットの普及や購買行動の多様化(ネットショッピングなど)により、現代のマーケティング業務は多岐に渡ります。
MAが導入される以前は、顧客リスト作成やメール配信、LP(ランディングページ)・フォーム制作など、煩雑なマーケティング業務を全て人が行います。
つまり、余計な業務に人的リソースや時間のリソースが費やされている状態です。
しかしMAを導入して一部作業を自動化し施策を一元管理することによって、そういった煩雑なマーケティング業務を削減することができます。
その分、MAでは行えないかつ効果的なマーケティング活動に人的リソースを回すことができるので、より効率的なマーケティング活動が期待できます。
新規顧客獲得に依存しなくなる
顧客の新規獲得にだけ走るととりあえず見込み顧客を増やそうと試みますが、フォローできる見込み顧客の数に限りがあるため、顧客創出にどうしても限界が生じてしまいます。
しかしMAを導入することで、新規獲得以外の方法で顧客を増やすことが可能となります。
例えば、まだ購入意欲はないものの購入へ至る可能性を秘めている潜在顧客を育成したり、購入が流れてしまった顧客へ再度アプローチしたりといった方法です。
このように、既存顧客への施策によって顧客の創出が可能となるため、新規顧客の獲得に依存する必要性が下がるのがメリットです。
購入へ至らなかった見込み顧客や購入まで時間がかかる見込み顧客をMAで把握・アプローチすることで、安定的・体系的な顧客創出が期待できます。
見込み客の取りこぼしを防ぐことができる
人が見込み顧客を全て完璧に管理しておくことは不可能に近いです。
イベントなどで交換した大量の名刺や、問い合わせなどのアクションがあったものの購入には至らなかった見込み顧客などが、そのまま放置されているケースも多いでしょう。
「見込みなし」と見なして放置した顧客の大半が、競合他社に流れているとも言われています。
こうした事態もMAを活用することで解消可能です。
MAツールを活用すれば、例えば「Webサイトに訪れてプラン一覧ページを閲覧してくれた」だったり「メルマガに記載のURLをクリックしてくれた」といったことが記録できます。
ユーザーの細かい動きまで追うことができるため、適切なアプローチをかけて取りこぼしを防ぐ効果があります。
マーケティングオートメーション(MA)のデメリット
先ほどまでMAを導入するメリットを解説してきましたが、メリットがあればもちろんデメリットも存在します。
一つは、導入してから効果を発揮するまでに時間を要するという点です。
特にリードナーチャリングは見込み顧客の検討段階に合わせて情報を与えながら少しずつ構成していくものなので、その間のナーチャリング用コンテンツの作成費や作業工数(人件費)といったコストが、先行して出ていきます。
中・長期的なプランでいつ先行投資した分が返ってくるかを把握した上で運用する必要があります。
次に、全ての施策を自動化できるわけではないという点です。
マーケティング担当者が、MAの運用ルールやコンテンツ作成、シナリオ設計などの初期設定をして初めてMAの仕組みが完成するので、それまではやはり人的リソースが必要です。
マーケティングオートメーション(MA)導入の流れ
MA導入のメリット・デメリットが把握できた上で、いよいよMAを導入するとしましょう。
MAを導入するにあたって、大きく5つのステップがあります。
- 目的を明確にする
- 導入ツールを洗い出す
- 他部署と連携する
- カスタマージャーニーマップの作成とコンテンツの準備
- 運用・検証
MA導入が成功するかに関わるプロセスなので、よく理解しておきましょう。
目的を明確にする
MAを導入するにあたって、まずは導入する目的を明確にしましょう。
目的を明確にするには、自社の現状を確認し、どのような課題を抱えているかを洗い出すことが重要です。
場合によっては別のツールの方が適しているとなり、MAを導入する必要がないケースもあります。
課題を洗い出したら優先度を設定し、MAツールで何を行うか、どんな施策を実施するかを具体的に決めていきます。
ここで注意なのは、MAによる工数削減は第一目的ではなく副次的効果である点です。
工数削減ではない別の指標から、適切なKPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)を設定しましょう。
例えばBtoCであれば、KPIはメールの到達率や申込数、KGIは売上や販売数など、BtoBであればKPIは資料ダウンロード数や獲得メールアドレス数、KGIはリード獲得数や商談化数などが挙げられます。
導入ツールを洗い出す
MAツールを導入することが決まったら、次は導入するツールの検討に移りましょう。
各ツールを比較し、自社の課題解決に必要な機能を有しているものを探します。
MAツールは多種多様でそれぞれ魅力的な機能がついています。
しかし重要なのは、自社の課題解決に効果的な機能であるか、自社で実現したいことを叶えるのに充分な機能であるかどうかです。
そこを見極めながら、ツールの選定を行うとよいでしょう。
また、ツールの価格も非常に大きなポイントです。
一般的に、MAツールはクラウド型の月額課金モデルで提供されているものが多く、長く使えば使った分だけ金銭コストがかかります。
一見魅力的な多機能・高価格な製品を導入してしまうと、必要以上にコストがかさんでしまうため、注意が必要です。
他部署と連携する
MAはマーケティング部門のみで運用しても大きな効果は得られません。
マーケティングが営業に反映されて売上が伸びることがもっとも重要です。
そのため、営業部門とは特に密接な連携が必要です。
お互いに何をどこまで実施するのか役割分担を明確にした上で、頻繁に情報共有しながら効果検証を続けていくことが必要になってきます。
見込み顧客ごとに異なるアプローチを可能にするシナリオ機能や、スコアリングなどによって導き出した見込み顧客のリストが実際の商談成立や案件の創出につながっているのか都度確認しましょう。
実際の数値を確認した上で、ペルソナ選定は効果的かだったり、スコアリングの基準は合っているかといった設計を修正して、PDCAサイクルを回すことがおすすめです。
カスタマージャーニーマップの作成とコンテンツの準備
ツールの運用手順が決まったら、カスタマージャーニーマップの作成とコンテンツの準備に入ります。
カスタマージャーニーマップとは、自社と見込み顧客の出会いから商品・サービスの購入、そして最終的に優良顧客となるまでの一連のプロセスを一つの図にまとめたものです。
ペルソナやカスタマージャーニーマップはMAツールに任せることはできず、人的リソースを投入して取り組む、非常に重要なポイントとなります。
それと同時に自社で提供するコンテンツの準備もしましょう。
メルマガだったり顧客の行動に合わせて内容を変えていくステップメールなど、発信するコンテンツの内容も一連のMAの重要な因子です。
ここも人的リソースをかけて取り組むべきポイントの一つです。
運用・検証
MAツールの導入、ペルソナやカスタマージャーニーマップ策定、コンテンツの準備が完了したら、いよいよ運用開始です。
ここで重要なのは、運用しながら効果を検証しツールを改善するといったPDCAサイクルを回すということです。
一通りMAツールが導入できたら終わりというわけにはいきません。
設定したKPIやKGI、売上数字などを確認して、
- ペルソナやカスタマージャーニーマップは想定通りか
- スコアリング設定は適切か
- コンテンツは十分に効果を発揮している内容か
といったマーケティングの根幹に関わる部分を改善していく必要があります。
こういった改善を重ねていくことで初めてMAツールを最大限活用したことになります。
マーケティングオートメーション(MA)は上手に活用しないと効果が出ない
MAを上手に活用するには、そもそもマーケティング施策に十分な人的リソースを投入できることが非常に重要なポイントとなります。
MAツールで多少の工数削減は図れますが、それを踏まえてもペルソナやカスタマージャーニーマップの選定など、人的リソースが必要な場面は多いです。
特にMAを運用してからPDCAサイクルを速く適切に回せるかどうかは、MAの効果が最大限発揮されるかに大きく関係してきます。
そこを考慮してMAを導入すれば、得られる恩恵は大きいです。
一連のマーケティング施策が可視化されることで、見込み顧客の漏れが防げたり、新たなマーケティング施策のきっかけになる可能性を秘めています。
前述したMA導入の流れを正しく理解して活用すれば、MAは間違いなく自社のマーケティングに貢献してくれるでしょう。
マーケティングオートメーション(MA)で効果的なマーケティングを実現しよう
本記事では、マーケティングオートメーションの概要やメリット・デメリットについて解説してきました。
見込み顧客から優良顧客の開拓をサポートするMAは、工数削減や顧客獲得において大きなメリットがあります。
一方で、導入してから本領を発揮するまでに時間がかかるデメリットもあるので注意が必要です。
理由としては、導入してからPDCAを回して、ペルソナなどマーケティングに関する因子をそれぞれ改善する必要があるためです。
金銭的・人的・時間的リソースがどれだけ必要になるかを正しく把握してMAを導入すれば、人だけで行っていたマーケティング施策が大きく向上することは間違いないでしょう。
本記事を参考に、ぜひMAを活用してみてください。