インターネットやSNSなどの普及によって、消費者の情報収集・購買行動は多様化しています。
そんな現代では、マーケティングを行って成果を出すにも単純にはできません。
そこで出てきたのがカスタマージャーニーという分析手法。
しかし、カスタマージャーニーを初めて聞いた人の中には「カスタマージャーニーってどんなもの?」「カスタマージャーニーはなぜ必要なの?」「カスタマージャーニーを自社で活用するにはどうすればいい?」という疑問を持つ人も多いです。
カスタマージャーニーが重要と聞いてもイマイチ活用方法が分からず不安ですよね。
そこで本記事では、大きく以下5つのテーマについて紹介します。
- カスタマージャーニーとは?
- カスタマージャーニーマップを作る目的
- カスタマージャーニーマップの事例
- カスタマージャーニーマップの作成手順
- カスタマージャーニーマップを作る注意点
カスタマージャーニーの概念や目的から、マーケティングに活用するために必須なカスタマージャーニーマップを作る手順まで解説していきます。
カスタマージャーニーの考え方を取り入れ、適切なマーケティングが行えるようになれば成果が大きく改善されるでしょう。
実際の活用事例についても触れていますので、ぜひこの記事を参考にカスタマージャーニーを活用してみてください!
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、顧客の行動・思考・感情といった、商品やサービスの購買に至るまでの過程を旅に例えたものです。
これらを時系列で見える化して1枚の表にまとめたものをカスタマージャーニーマップと呼びます。
顧客のリアルな動きを見える化することで、適切な場所・タイミングで顧客の購買意欲を掻き立てることができます。
カスタマージャーニーについて語る際には同時にカスタマージャーニーマップについても語られるため、この2つの違いをしっかり認識しておきましょう。
現代では顧客が複数のチャネルを横断することで情報収集・購買行動を取るようになっており、顧客行動が複雑化しています。
見込み顧客を購入顧客に変え、更にリピーターまでにするためにも顧客体験のマネジメントは必須ですので、ぜひカスタマージャーニーを活用できるようになりましょう。
カスタマージャーニーマップを作る目的
カスタマージャーニーマップは、見込み顧客が商品・サービスを見つけて興味を持ち、購入するまでの行動や思考を可視化することができます。
顧客との接点を洗い出し、見える化することでフェーズごとのアプローチ方法を考えやすくなるカスタマージャーニーマップ。
ここからはそんなカスタマージャーニーマップを作る目的について詳しく解説していきます。
ユーザーの行動を把握する
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の購買プロセスを正確にイメージできるようになります。
いつ・どこで・何を考え・どう感じたのかを分析することで、どの段階で離脱し、購入まで至るにはどのようにすればよいかといった施策を打つことができます。
ユーザー目線の施策を打つ
行動全体を見える化することで、ユーザー視点で考えられるようになり、よりユーザーに寄り添ったマーケティング施策を行えるようになります。
どうしても自社で商品やサービスを作って販売していくと、技術力や質の高さなどをアピールしたくなりますが、ユーザーが何を思い、どのようなプロセスを経て購買まで至るのかを考えることで、販売者視点だけでなくより広い視点でマーケティングを行えるでしょう。
ユーザー目線に立つことで見つかる課題や改善点なども出てくるため、より適切な施策を打つことも可能になりますよ。
チームで共通認識を持つ
カスタマージャーニーマップを作りユーザーの心理や行動を可視化することは、顧客に対する効果だけでなく、チーム全体での一貫性を持たせる目的もあります。
カスタマージャーニーマップを作ることでユーザーの行動や思考を具体的に想定して可視化することができるため、部署や立場の違いなど関係なく、チーム全体で認識を統一することができます。
顧客がどの段階にいて、どのような施策を取るべきかといった共通の認識を持つことで、チームメンバーそれぞれが適切な行動を取ることができるでしょう。
カスタマージャーニーはもう古い?
一部では、カスタマージャーニーは現代のマーケティングに合わない古いものだと言われることがあります。
このように言われる要因は、ユーザーの行動がカスタマージャーニーのように一直線に進むわけではなく、行ったり来たりを繰り返すためです。
スマホが普及しインターネットがより身近になった現代では、ユーザーが得られる情報量が以前とは比べ物にならないほど増えています。
ブログ・Web広告・SNSなど企業と顧客の接点が増え、顧客の行動が多様化しすぎているため一概に予測できないと言われています。
しかし、だからといってカスタマージャーニーを設定しないでいい訳ではありません。
顧客は必ずどこかしらで企業と接触し何らかのプロセスを経て購入まで繋がります。
その多様なプロセスを1つずつ紐解くためにも、まずは基本的なカスタマージャーニーマップを作成し、都度ブラッシュアップしながらユーザーに適切なアプローチを仕掛ける気持ちで進めましょう。
カスタマージャーニーマップの事例
カスタマージャーニーマップは商品やサービス、ペルソナ設定によって様々なものがあり、組織外の人が見ても理解できないところがあります。
とはいえ、カスタマージャーニーマップを一般化したテンプレートもあるため、ここからはカスタマージャーニーマップを実際に活用している事例を紹介します。
クライアントのカスタマージャーニーマップ(リコー)
BtoBマーケティングを行う株式会社リコーの行っているカスタマージャーニーマップの事例は上記のようになっています。
複数のキーパーソンが登場し、顧客企業内の指示系統や担当部門などを意識して施策を設定することで、顧客となる企業全体に接点を作りアプローチしていることが分かります。
導入後も担当者向けのセミナーを行ったりといったサポートを行うことで、継続的な取引の流れを設定していることもtoB向けマーケティングの特徴といえるでしょう。
Airbnb利用者のカスタマージャーニーマップ
Airbnbは世界中の人と部屋の貸し借りを提供する民泊プラットフォームサービスです。
世界中の人が誰かの部屋を借りたり、自分の部屋を貸し出したりできるサービスは、従来になかった新しい価値提供の形といえるでしょう。
そんなAirbnbのカスタマージャーニーマップは、カスタマーエクスペリエンスという、これまでになかった方法で顧客の状況に応じた適切なサービスを提供することを重要視しています。
従来は旅行の宿泊はホテルなどの宿泊施設に限られていましたが、Airbnbを利用することで誰でも現地の一般家庭やツリーハウスなどに安く泊ることができる点が旅行の体験を大きく変え支持されています。
就活生のカスタマージャーニーマップ
株式会社パソナでは就活生に向けた新卒採用のWebサイトをリニューアルする際のカスタマージャーニーマップで、「新規事業を創出できる人材を獲得すること」をゴールにマップを作成する事例を紹介しています。
横軸には選考前→エントリー→面接→内定→決定までの時系列を据えて、その時々による学生の行動や感情・課題などを書き出しカスタマージャーニーマップを作成しています。
就活生のリアルな声を反映させるため、学生にインタビューを行い学生と一緒に作成しているのが印象的です。
予想していたペルソナ像ではなく、ペルソナ当事者を巻き込んで作成したカスタマージャーニーマップのため精度の高いものとなるでしょう。
カスタマージャーニーマップの作成手順
ここまで、カスタマージャーニーマップを作る目的や活用事例などを紹介してきました。
しかし、実際に運用していくとなると具体的な作り方が分からない方も多いですよね。
ここからは、実際にカスタマージャーニーマップを作成する手順を6つのステップごとに紹介します。
業界・業種・事業フェーズなどのバックグラウンドの違いによっても様々なパターンが考えられますので、あくまでもスタンダードな作成手順として参考にしてください。
1.ゴールを設定する
まずはゴールを設定します。
目指すべきゴールによって作成するマップの枠組みが異なるため、ゴール設定はカスタマージャーニーマップを作る上でも重要といえるでしょう。
必ず目指すべきゴールを明確化させた上で以降の手順に進むようにしてくださいね。
2.ペルソナを設定する
ゴールを設定した後は、分析対象となるペルソナを設定します。
ペルソナとは、自社の商品やサービスを購入する仮想の顧客像です。
ペルソナを設定する際はなるべく具体的な特徴を設定することが重要なため、年齢・性別・職業・居住地・趣味嗜好・ライフスタイルなど詳細まで決めましょう。
具体的に設定すればこの後に決めていくペルソナの行動や感情をイメージしやすくなりますよ。
3.ペルソナの行動を洗い出す
ペルソナを設定した後は、ペルソナの行動を時系列で洗い出しましょう。
横軸にペルソナの行動フェーズを設定します。
行動フェーズはtoBやtoCによっても異なりますが、概ね商品・サービスとの出会い→興味・関心→比較検討→購入というようなフェーズを設定できるでしょう。
まずスタートとゴールの行動を具体的にすることが重要です。
ここでのアイデアが実際の施策を取る上での土台となりますので、データや想像力も働かせながらペルソナの行動をしっかり紐解くようにしてください。
4.ペルソナの感情や思考を洗い出す
次にやるべきこととして、ペルソナの行動ごとの感情や思考を洗い出しましょう。
データがない場合は、市場調査を行うなどして行動に紐づく心理を読み解くことが重要です。
「かっこいい」「試してみたい」などのポジティブな感情、「わかりにくい」「面倒くさい」などのネガティブな感情どちらにも着目して洗い出してください。
5.現状の課題や施策を洗い出す
ここまででペルソナ像がかなり絞られていると思いますので、各フェーズの顧客ごとに購買を促すための課題や施策を洗い出していきます。
この段階では各部署・担当などから意見を持ち寄ることで、様々な角度からの施策を打ち出していくことが重要です。
これまではペルソナの立場から物事を見てきましたが、ここからは企業目線でできることを考えましょう。
可能かどうかはひとまず置いておいて、やったほうがいい事ややるべきことなどを全て洗い出してください。
6.マップに落とし込む
最後にこれまで洗い出してきたものをマップにして仕上げます。
横軸には時系列をフェーズごとに並べ、縦軸には行動・思考・感情・課題・施策などを並べましょう。
マップは必要以上に作り込む必要はありませんが、最低限マップを作った人以外でも理解ができるように工夫することは大切です。
こうして作成したカスタマージャーニーマップを関係者間で共有して、更に作り込むことでユーザーに沿ったマーケティングを行うことができるでしょう。
カスタマージャーニーを成功させるにはペルソナ設定が重要!
カスタマージャーニーを成功させる上で最も重要なのがペルソナ設定です。
ペルソナをしっかり作り込むことができれば、カスタマージャーニーマップの精度が高まり、ゴール達成の実現性が高くなります。
ペルソナ設定する際に注意しておくべきことが企業にとって都合のいい人物像を作りあげてしまわないことです。
妄想でペルソナ設定をすることなく、データに基づいて導き出された適切なペルソナ設定をすることがカスタマージャーニーを使ったマーケティングを成功させる第一歩となります。
一番いいのは、就活生のカスタマージャーニーマップの事例でも紹介したように、リアルなペルソナ像にインタビューして机上だけで考え込まないことです。
カスタマージャーニーマップ作成の手順を見てわかるように、ペルソナを起点に行動や感情の洗い出しや施策を考えていくため、ペルソナ設定はしっかりと作り込むようにしましょう。
カスタマージャーニーマップを作るときの注意点
カスタマージャーニーマップはただ闇雲に作成すればいいものではありません。
せっかくカスタマージャーニーマップを作成してもマーケティングの成果に繋げられなければ意味がないですよね。
そこでここからはカスタマージャーニーマップを作る上で抑えておくべき注意点について紹介します。
複数人で作成する
注意点1つ目はカスタマージャーニーマップは一人で作り込まないということです。
なぜなら、一人の視点で考えられることは限られており、どうしても偏りが生まれてしまうためです。
しかし、様々な部署や立場の違う複数人で決めることで、顧客とのタッチポイントの幅が広がり、広い視野からカスタマージャーニーマップを作ることができます。
最初から作り込まない
カスタマージャーニーマップは顧客の一連の購買体験を俯瞰できるだけの情報を集める必要があります。
なので最初から詳細に作り込もうとしても難しく行き詰まってしまいます。
組織内に顧客に関する情報が少なければ精度の高いものを作ることは難しいでしょう。
そのため、まずは全体を仮でもいいので作りあげることを目指しましょう。
全体像が見えれば、精度が足りずに更に作り込むべきところや、逆に不必要な部分も見えてくるはずです。
憶測や願望は入れない
カスタマージャーニーマップを作る目的でも触れましたが、特に重要なのはユーザー目線に立ってユーザーに寄り添ったマーケティングを行うことです。
仮設や主観が入るとユーザー目線を忘れてしまいますので、作る側の憶測や願望が入り込まないように注意しておきましょう。
ユーザーに対する先入観や自社商品・サービスへの思い入れを強く持ちすぎないようにし、ユーザーの実態に沿ったカスタマージャーニーマップを作成するよう心がけることが重要です。
作りっぱなしにしない
最後に、カスタマージャーニーマップは一度作って終わりではなく、随時更新していく必要があります。
なぜなら、日々新しい商品やサービスが生まれ、流行りの移り変わりも早い現代では、顧客の情報や購買行動はすぐに更新されていくからです。
市場調査や効果検証を行いながら運用していき、都度ブラッシュアップしていきましょう。
ここでも常にユーザーに向き合う姿勢を大切にすることが重要ですよ。
まとめ
本記事ではカスタマージャーニーマップの作り方・注意点から活用事例まで紹介してきました。
カスタマージャーニーマップは購買プロセスが複雑・多様化している現代でマーケティングを行う上で非常に重要です。
カスタマージャーニーマップを作ることでユーザーの行動・心理を深く理解でき、よりユーザー目線に立ったマーケティング施策を行えるようになります。
マーケティングにおいて、顧客を理解し顧客の課題をチーム一丸となって解決することが重要ですので、部署や立場の違いを超え、様々な人を巻き込んでカスタマージャーニーマップを作るようにしてください。
これからWebマーケティングを行っていく方は、この記事を参考にぜひカスタマージャーニーを活用することをおすすめします。